ほとんどの工事現場では毎日のように「作業日報」を作成します。しかし作業日報の書き方・作り方には明確な基準がないため「なにを、どのように書けば良いのか?」で悩んでいる事業者や作業員も少なくありません。
この記事では作業日報を書く意味やメリットをはじめ、記入すべき項目や作成に使えるツールなどについて解説します。
作業日報と建設業には深い関係があります。実際、ほとんどすべての工事現場では作業日報が作成されて、日々の業務の記録として、また業務改善に必要なツールとして利用されています。
建設業で作成される「作業日報」とは、その日一日の作業内容について工事の関係者、特に上長や会社に報告する書類です。
作業日報は原則として作業員一人一人が作成します。その日の工事が終了した後、業務の締めくくりとして記入・提出されることが一般的です。
建設業関係の法律には「作業日報を作成しなければならない」といった規定はありません。しかし次の項目で説明するように作業日報は工事の進捗管理や現場の課題把握に役立ち、コスト改善や労働環境の改善といったメリットもあります。
また法律では元方事業に「労働者が法律違反をしないよう指導し、是正に必要な指示をする」ことを義務づけていますが(労働安全衛生法第29条)、作業日報はそうした指導や指示が適切に行われていることの「証拠」です。
こうした事情から、作業日報は実質的な義務(社内義務)として多くの作業現場で作成されています。
作業日報は単なる記録や日記のようなものではありません。それぞれの作業員が作成する作業日報は、特に上長や会社にとって、工事現場の様子を正確に把握・共有するための貴重なツールとなります。
作業日報の大きな役割といえるのが、工事進捗の見える化です。
作業日報を読めば、その日にどのような作業が行われたのか、予定されていた作は完了できたか、工事に遅れはないかなどを速やかに把握できます。
作業日報は工事の進捗だけでなく、労働環境も見える化します。
現場全体について、危険な箇所や作業の障害になるような問題の有無、その原因について把握できるのも作業日報の特徴です。
作業日報で報告される情報は、上長や会社だけでなく、必要に応じて他の作業員とも共有されます。
作業員全員が直接集まってミーティングできない場合でも、作業日報があれば作業に関する気づきやヒヤリハット事例などを関係者全員でシェアできます。
作業日報の作成にはいくつものメリットがあります。
作業日報で工事の進捗を知れば生産性の課題にも気づきやすくなります。
一定の作業にかかった日数や作業員の数、作業そのものの内容から「作業の効率が悪い(無駄な作業が多い)」「作業内容に対して労働力が足りない、もしくは余っている」など現状の課題を掴めますし、必要な対策も立てやすくなるでしょう。
作業日報による生産性の向上は、コスト削減にもつながります。
たとえば作業日報からそれぞれの作業員の働き方を把握することで最適な人材配置が可能になり、労務費の中でも特に大きな比重を占める「人件費」を削減できます。また作業の無駄やミスが減ることで資材にかかるコストなども節約できるでしょう。
作業日報を利用すれば労務管理も可能です。
具体的には、それぞれの作業員が何時から何時まで働いたか(勤怠管理)、勤務時間内でどのような作業をしたか(働き過ぎや怠慢がないか)を把握することができます。特に「直行・直帰」が多い現場では作業日報が貴重な情報源となるに違いありません。
作業日報からは作業員の心身の状態や、作業場の人間関係(のトラブル)を読み取れることもあります。
こうした問題を把握できれば労働環境の改善など必要な対策をとりやすくなり、結果として従業員の保護や人材の確保(特に離職の防止)にも役立つでしょう。
これまでに挙げたメリットと重なる内容ですが、作業日報はさまざまなトラブルの防止に活用できます。
生産性が向上すれば工期の遅れによるトラブルを避けられますし、コストの削減は採算に関するトラブルの防止に、労働環境の改善は作業員の心身や人間関係のトラブル防止に役立つでしょう。
作業日報には決まったフォーマットはありません。このため各事業主や工事現場ごとに任意のフォーマットを用意して、それに必要事項を記入していきます。
一般的な作業日報には以下のような項目を記載します。あくまで一例ですが、ぜひ参考にしてみてください。
記載のポイントは、できるだけ具体的に書くこと。
特に「目標」や「振り返り、反省」などの項目に「特になし」などと書くのはNGです。また「上長のコメント」は、作業日誌が形式的なものにならないためにも必須といえます。
作業員や上長など現場の一人一人が常に目標や問題意識を持って働くことは、本人たちの成長にとっても、工事現場全体や会社にとってもプラスになるでしょう。
作業日報は「その日の作業終了後」に作成します。項目によってはあらかじめ記入できるもの(工事名や記入者名など)もありますが、当日の作業内容や振り返りなどを事前に記入することはできません。
作業日報の媒体には「紙」と「デジタル」があります。
昔ながらの建設会社では、今でも紙による日報作成・管理をしているところも少なくありません。しかしデジタルの作業日報は管理の手間が少なく、検索も簡単で活用しやすいといったメリットがるため、最近ではデジタルに移行する現場も増えています。
デジタル媒体の作業日にも種類があります。ここでは「ワードやエクセルで作る作業日報」と「作業日報の専用アプリ(システム)」に分けて、それぞれの特徴を紹介します。
業務で使うパソコンには、大抵ワードやエクセルが入っています。また作業員の多くも、特別なトレーニングを受けなくてもワード・エクセルを使えるでしょう。
つまりワードやエクセルを使った作業日報は、特別なソフトを買ったりサービスを契約しなくても利用できる手軽なデジタル作業日報というわけです。
もちろん手軽といっても、機能や利便性に不足はありません。項目の追加や削除は柔軟にできますし、自社でフォーマットを作るのが難しい場合でも、あらかじめ必要事項をまとめた「テンプレート」をご用意しました。リンクからダウンロードしてご利用ください。
ほかにもインターネット上に色々なテンプレートが豊富に公開されています。 テンプレートのほとんどは「無料」なので、まずはお試しで使ってみるのもよいでしょう。
デジタルの作業日報を「より効率的に」作成・活用できるのが作業日報向けのアプリ(工事管理システム・現場管理システム)です。
いろいろな会社が特徴のあるサービス(たとえばSNSのような機能を備えたもの、スマホやタブレットから利用できるものなど)を提供しているため、自社のニーズや好みに合ったものを選べるのも大きなメリットでしょう。
ただし導入にはシステムの購入(買い切りや月払いなど)が必要で、ワードやエクセルと違って「使い方を覚える」必要がありますが、いったん使い慣れてしまえば日報作成にかかる時間や活用の手間を大幅に減らすことができます。
ワードやエクセルによる作業日報が物足りないと感じたり、作業日報の作成や活用をさらに効率化したいなら、導入を検討してみてもよいでしょう。
作業日報の作成には、生産性の向上やコストの削減、労務管理の効率化、労働環境の改善、トラブルの防止などに役立ちます。また便利なデジタルツールを利用すれば作成にかかる手間が軽減される、会社にとっても活用しやすくなります。ぜひ自社に合ったツールを見つけて「作業日報のデジタル化」に取り組んでみはいかがでしょうか。