包括連携協定とは?事業者側のメリット・デメリットをわかりやすく紹介

地域が抱えるさまざまな課題を解決するため、自治体と民間企業が協力して取り組む「包括連携協定」

本記事では包括連携協定のメリットやデメリット、最近締結された包括連携協定の事例などを紹介していきます。

包括連携協定とは?

包括連携協定とは、地域が抱える課題に対して自治体と民間企業が協力するための契約です。自治体と民間企業は、この協定を通じて地域課題の解決に向けた取り組みを行います。

ちなみに地域の課題は、福祉、環境、防災からまちづくりまで多岐に渡ります。具体的な協力の内容は地域の課題や双方のリソースにより異なりますが、共通の目的は地域社会の持続的な発展と改善に向けた活動を推進することです。

包括連携協定の目的

包括連携協定の目的は、自治体の公共サービスや地域開発と民間企業のビジネス活動を結びつけ、地域全体の価値向上を図ることです。

自治体は地域の課題を深く理解し、適切な施策を講じる能力を持っていますが、その実行には資金や専門知識が必要です。

ここで民間企業が役割を果たし、自社の事業活動を通じて地域課題の解決に貢献することが求められます。

近年は全国で大規模な自然災害が頻発しており、自治体の負担は増える一方です。また地方に行くほど少子高齢化の影響が大きく、自治体の税収悪化につながっています。魅力ある自治体として住民を引きつけるためにも、包括連携協定などを活用した新しい行政サービスに期待が集まっています。

包括連携協定のメリット・デメリット

包括連携協定は、民間企業にとってさまざまなメリットとデメリットをもたらします。

メリット

ビジネスチャンスの拡大

包括連携協定を通じて地域課題の解決に取り組むことは、新たなビジネスチャンスを生み出します。自治体との協働により、地域に密着したサービスや商品を提供することが可能となります。

信頼関係の構築

自治体との連携を深めることは、地域社会との信頼関係を強化します。これは企業のブランド価値を向上させ、結果的には企業価値の向上につながります。

高い宣伝効果

自治体と連携した事業は注目を集めやすく、企業にとっては格好の宣伝材料となります。これにより、他の自治体や民間企業と新たなビジネスパートナーシップを結ぶチャンスが生まれる可能性があります。

デメリット

リソースの拘束

包括連携協定の遂行には財政的、人的リソースが必要です。このため協定を結ぶことで、これらのリソースを他のビジネスチャンスに投資できなくなる可能性があります。

ただし、この問題は事前の計画と適切なリソース管理によって緩和することが可能です。また、自治体との良好な関係を通じて追加の支援や資源を得ることもできるでしょう。

リスクの増大

包括連携協定は、企業が地域課題の解決に直接関与することを意味します。その結果、企業が課題解決に失敗した場合、その影響は企業の評価にも直接反映される可能性があるでしょう。

このため包括連携協定を結ぶ際は、リスク管理の徹底が重要です。具体的には、問題の早期発見と解決のためのフィードバックループの設立、専門的なリスク評価の導入などが考えられます。

収益性が低い

包括連携協定の事業は直接的な収益性が低い場合があります。これは、地域課題の解決が主目的の事業の場合、商業的な利益の追求が難しいためです。

しかし包括連携協定の事業は中長期的なブランド価値向上や地域との強固な関係構築をもたらすため、直接的な収益性だけでなく、間接的な収益性も考慮することが重要です。また、事業のコスト効率を高めるための工夫や、助成金などの公的資金の活用も視野に入れると良いでしょう。

建設業界の包括連携協定事例

建設業界では、これまで多くの自治体と建設会社が包括連携協定を結び、地域のインフラ整備や環境改善などの課題解決に取り組んできました。ここではそうした事例のいくつかを紹介します。

事例1:福岡県大木町×西松建設「脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定」

大木町と西松建設が2022年4月19日に締結した「脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定」は、地球温暖化対策推進法の改正を受けた取り組みのひとつです。

大木町では「2030年までに公共施設の使用電力を全て再生可能エネルギーで賄う」と宣言し、2021年3月に「大木町2050年温室効果ガス排出量実質ゼロロードマップ」を策定しました。この実現に向けて、大木町と西松建設は連携して以下の5点に取り組むとしています。

  1. 大木町の脱炭素のまちづくりに向けた諸施策の推進
  2. 大木町における再生可能エネルギー発電設備及び省エネルギー設備等の導入・活用推進
  3. 大木町の地域レジリエンス向上
  4. 大木町の地方創生・少子高齢化対策につながる環境と経済の好循環を図る仕組みの構築
  5. その他相互に連携協力することが必要と認められる事項

参考:福岡県大木町における「脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定」を締結 | 西松建設株式会社

事例2:愛知県岡崎市×大成建設「魅力的なまちづくり推進のための包括連携協定」

大成建設と岡崎市は、2022年11月18日に「魅力的なまちづくりの推進(利便性向上)」や「もっと歩きたくなるまちウォーカブルシティの構築(回遊性向上)」を目的にした「魅力的なまちづくり推進のための包括連携協定」を締結しました。

この協定の目的は、スマートシティの推進を目指す岡崎市と大成建設の技術やまちづくりのノウハウを結集して、市民や来訪者にエコでスムーズな移動スタイルを提案することです。連携する内容は以下の5点です。

具体的な取り組みとしては、岡崎市が取り組む渋滞緩和策の一つ、次世代モビリティ(電動キックボードなど)を活用した「次世代モビリティを活用したまちの歩道空間や路面状況のモニタリング」「路面太陽光パネルから得られる再生可能エネルギーによる無線充電」が挙げられています。

参考:大成建設と岡崎市が「魅力的なまちづくり推進のための包括連携協定」を締結

事例3:茨城県常総市×インフロニア・ホールディングス「公共施設及びインフラを活用した市民サービスの向上に関する包括連携協定」

常総市とインフロニア・ホールディングスは、2022年09月27日に「公共施設及びインフラを活用した市民サービスの向上に関する包括連携協定」を締結しています。この協定は、人口減少社会に対応した効率的な自治体経営を実現し、充実した公共サービスを提供するためのものです。

連携事項としては、公共施設の大規模改修や更新、インフラの整備、防災先進都市の推進、ゼロカーボンシティの推進、デジタルを活用した地方創生、などが挙げられています。

また具体的な取り組みとしては、公共施設や店舗の余剰空間を活用して施設の課題解決と地域スポットの創出を目指す「IoT認証による施設管理DXとローカルサービス実証プログラム」が挙げられています。

参考:常総市と包括連携協定を締結/インフロニア・ホールディングス|2022年|ニュース

事例4:大分県由布市×建設技術研究所「交通・都市・地域活性・防災をテーマにした包括連携協定」

由布市と建設技術研究所は2022年3月16日に「地域自治を大切にした住み良さ日本一のまち・由布市」の実現に向けた包括連携協定を締結しました。これは交通・都市・地域活性・防災というテーマで、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラル社会の確立を、地域の課題解決推進を目指すものです。

具体的には以下の4分野で連携し、行政サービスの向上と技術やノウハウの蓄積を進めるとしています。

  1. 交通対策:交通緩和対策の支援、新たなモビリティサービスの導入支援、持続可能な交通のあり方の検討支援
  2. まちづくり:地域公共交通計画策定の支援、自転車活用推進計画策定の支援、サテライトオフィスやテレワークによる施設の活用支援
  3. 地域活性化:カーボンニュートラル、ウォーカブルなまちづくりの支援、戦略的な観光振興の支援、道の駅ゆふいんの振興の支援
  4. 防災:道路防災対策の支援、防災点検計画の支援、住民避難方策の支援

参考:大分県由布市と交通・都市・地域活性・防災をテーマに包括連携協定を締結しました。

まとめ

包括連携協定は、地域課題の解決に向けた自治体と民間企業の協力を形式化したものです。新たなビジネスチャンスの創出や地域との信頼関係強化といったメリットがありますが、リソースの拘束やリスク増大といったデメリットも忘れてはなりません。

特に建設業界では、地域のインフラ整備や環境改善といった課題に対する解決策を提供するため、包括連携協定の活用が進んでいます。これらのメリットとデメリットを理解し、自社のリソースと地域の課題を見極めながら、適切な連携協定を締結することが重要です。

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