建設業の一般管理費とは?計算方法や現場管理費等との違いを解説します

建設業におけるプロジェクトの成功は、効率的な財務管理に大きく依存しています。特に、一般管理費はプロジェクト全体のコストを大きく左右する要素であり、適切な管理と計算が不可欠です。この記事では、建設業の一般管理費の重要性、計算方法、そして現場管理費や工事原価との違いについて、わかりやすく解説していきます。

一般管理費とは

建設業における一般管理費とは、建設工事現場に直接関連しない、企業の経営を維持するために必要な費用の総称です。これは建設業者の収益を大きく左右する重要な費用で、工事費用全体に対する割合が高くなるほど収益が減少し、経営が圧迫されます。

一般管理費の内訳

建設業における一般管理費の内訳は、以下のとおりです。

【人件費】

人件費は、一般管理費の中で最も大きな割合を占める費用です。本社や営業所の従業員の給与や福利厚生費が含まれます。このうち福利厚生費は従業員の生活を保障するために支払われる費用で、社会保険料や退職金、健康保険組合費などが含まれます。

【物件費】

物件費は、本社や営業所の賃料や光熱費が含まれます。このうち賃料は本社や営業所を借りるために支払う費用で、光熱費には本社や営業所の電気代やガス代などにかかる費用が含まれます。

【通信費】

通信費には、主に電話代やインターネット代、郵便代金(切手代など)が含まれます。

【消耗品費】

消耗品費は、主に事務用品や備品の購入費です。事務用品費にはコピー用紙やボールペンなど、備品費にはデスクや椅子などの購入費が含まれます。

【減価償却費】

減価償却費とは、建物や機械など、使用することで価値が減少する資産について、その減少分を毎期費用として計上したものです。「現金支出を伴わない費用」と呼ばれることもあります。

【保険料】

保険料には、火災保険や労災保険などの保険料が含まれます。火災保険とは、火災による損害を補償するもので、労災保険は労働災害による労働者の負傷や死亡を補償するものです。

【その他】

その他には、広告宣伝費や研修費などが含まれます。広告宣伝費は自社の商品やサービスを宣伝するために支払われる費用です。研修費は、従業員のスキルアップや知識向上のために支払われます。

一般管理費の勘定科目

一般管理費の勘定科目は、一般的に以下のとおりです。

  • 給与手当:従業員の給与や賞与、各種手当などが含まれます。一般管理費の中で最も大きな割合を占める費用です。
  • 福利厚生費:従業員の生活を保障するために支払われる費用です。社会保険料や退職金、健康保険組合費などが含まれます。
  • 地代家賃:本社や営業所の賃料が含まれます。
  • 水道光熱費:本社や営業所の電気代やガス代などが含まれます。
  • 通信費:電話代やインターネット代が含まれます。
  • 消耗品費:事務用品や備品の購入費が含まれます。
  • 減価償却費:建物や機械などの使用に伴う価値減少分を計上します。
  • 保険料:火災保険料や労災保険料などが含まれます。
  • 広告宣伝費:自社の商品やサービスを宣伝するために支払われる費用です。
  • 旅費交通費:従業員の業務に伴う旅費や交通費が含まれます。
  • 会議費:会議や研修などの費用が含まれます。
  • 交際費:取引先との接待や交際などに支払われる費用です。

一般管理費の勘定科目を適切に把握することは、経営の状況を把握し、一般管理費率を適正に管理するためにも必要です。

一般管理費率について

一般管理費率とは、工事原価に対する一般管理費の比率のことです。ただし入札などに参加する際、一般管理費率が著しく下げられる(人件費などが不当に削られる)ことがないよう、国土交通省では下限を定めています。一例として、土木工事の基準は次のとおりです。

(例)土木工事における一般管理費率の基準

工事原価一般管理費等率
500万円以下23.57%
500万円を超え30億円以下-4.97802×LOG(Cp)+56.92101
※Cp=工事原価
30億円超9.74%

令和4年度 国土交通省土木工事・業務の積算基準等の改定を参考に作成

建設事業者は基準の値に応じて、一般管理費が基準を上回るよう調整する必要があります。

現場管理費や工事原価との違い

一方、現場管理費や工事原価は、一般管理費とは異なり直接的なプロジェクトのコストに関連する費用です。

現場管理費とは

現場管理費とは、工事現場の管理に必要な費用の総称です。具体的には、以下のようなものが含まれます。

人件費:現場監督や現場作業員の給与や福利厚生費

事務用品費:現場で使用する事務用品や備品の購入費

交通費:現場監督や現場作業員の移動にかかる費用

通信費:現場で使用する電話代やインターネット代

保険料:工事保険料など

現場管理費は、工事現場を円滑に運営するために必要な費用であり、工事費の工事原価に含まれます。これに対し一般管理費は工事原価に含まれません。

工事原価とは

工事原価は、建設工事現場で直接的に発生する費用の総称です。具体的には、以下のようなものが含まれます。

材料費:工事現場で使用する材料の購入費

労務費:工事現場で作業する労働者の給与や福利厚生費

外注費:工事現場で使用する外注サービスの費用

重機費:工事現場で使用する重機の使用料

仮設費:工事現場で使用する仮設設備の設置や撤去にかかる費用

諸経費:工事現場で発生するその他の費用

工事原価は、工事費の大部分を占める費用であり、工事の収支を左右する重要な費用です。上で説明したとおり、現場管理費はこれに含まれますが、一般管理費は含まれません。

一般管理費の削減方法

建設業において一般管理費は運営コストの大きな部分を占めます。したがって、これらの費用を効果的に削減することは、全体の利益向上に直結します。ここでは、経費の削減、業務の効率化に焦点を当て、その方法を探ります。

経費を削減する

経費を削減することは、一般管理費率を下げる効果があります。経費を削減する方法としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 契約書や見積書の見直し
  • 仕入れ先の見直し
  • 通信費や光熱費の見直し
  • 保険料の見直し
  • 旅費交通費の見直し

業務の効率化

業務の効率化を図ることで、人件費や経費の削減につながります。業務の効率化を図る方法としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 業務フローを見直す
  • システムを導入する
  • 業務を標準化する
  • ITを活用する

特に建設事業者の業務の標準化やIT活用については、国土交通省もさまざまな取り組みを進めています。各種の支援制度を活用することで、業務の効率化にスムーズに取り組むことができるでしょう。

まとめ

建設業における一般管理費は、プロジェクトの成功と企業の利益に大きく影響します。この記事では、一般管理費の概念、計算方法、現場管理費や工事原価との違い、そして削減方法について詳しく説明しました。これらの情報が、効果的な財務管理とコスト削減のための一助となれば幸いです。建設業における成功は、適切な財務管理から始まります。是非、これらの知識を活用し、より効率的で利益の高い経営を目指してください。

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