入札辞退届とは何か?ペナルティを受けないために大事なポイントも解説

入札参加の手続きを始めたものの、事情が変わったり、価格が折り合わなかったりして自ら参加を取りやめることを「入札辞退」といいます。

今回は入札辞退の際に注意すべきポイントや、入札辞退に必要となる書類の作成方法・提出方法についてわかりやすく解説します。

一般的なルールを説明していきますが、入札辞退届のルールやペナルティーの有無は発注元によって異なります。必ず入札前に確認して下さい。

「入札辞退届」とは

「入札辞退届」とは、入札辞退の際に必要となる書類です。従来は「紙の文書」で作成・提出するのが一般的でしたが、最近では電子入札システムを経由して、「電子文書」として提出されるケースが大半です。

参考までに、「辞退」と似たような言葉に「不参加」「無効」「失格」があります。発注者によってはこれらの言葉を厳密に使い分けている場合があるので、それぞれの一般的な意味を説明しておきます。

  • 辞退…入札参加者が「入札辞退届」を提出して入札手続きを取りやめること
  • 不参加…入札参加者が「届出なしに」入札手続きを取りやめること
  • 無効…入札書を含む提出書類の記入にミスがある場合など
  • 失格…入札金額が最低価格を下回っていたり、予定価格を超えている場合など

入札辞退届はいつ提出するの?

入札辞退届の提出はタイミングが重要です。まずは「一般競争入札」と「指名競争入札」のそれぞれについて、一般的な入札の流れと辞退可能なタイミングを表で説明します。

一般競争入札指名競争入札
辞退可能入札参加資格確認申請書の提出〜入札書の提出前指名通知〜入札書の提出前
辞退不可入札書提出〜開札入札書提出〜開札
辞退可能再度入札(再入札)の告知〜入札書の提出前※再度入札(再入札)の告知〜入札書の提出前※
辞退不可落札〜契約落札〜契約

※1回目の開札/2回目の開札で落札者が決定しない場合

入札参加の最初の手順となる「入札参加資格確認申請書の提出」から「入札書の提出前」までの間は、原則として入札辞退届の提出が可能です。この場合は「入札辞退」という扱いになります。一方、入札辞退届を提出しないまま入札書の提出期限が過ぎてしまうと「入札不参加」という扱いになります。

開札の際に入札参加者全員の入札価格が予定価格を超えている場合は、最大3回程度まで「再度入札(再入札)」を行うことがあります。

予算決算及び会計令 第82条
契約担当官等は、開札をした場合において、各人の入札のうち予定価格の制限に達した価格の入札がないときは、直ちに、再度の入札をすることができる。

※自治体の再度入札についても「地方自治法施行令 第167条の8」に同様の規定あり。

再度入札が行われた際、「これ以上の入札は自社の予算に見合わない」と判断したなら入札辞退できます。この場合は入札辞退届ではなく「辞退札」(入札書の金額欄に「辞退」と記入したもの)を提出します。

なお、「辞退可能」期間に入札辞退届を提出する場合は、原則としてペナルティはありません。入札不参加についてもペナルティが科されないことがほとんどですが、発注者や入札案件によって扱いが異なります。入札への参加を途中で取りやめる場合、まずは入札辞退届の提出を心がけるようにしましょう(ペナルティの有無については、必ず発注者に確認が必要です)。

入札の辞退によって、ペナルティーを受ける可能性があるケースは?

入札辞退によるペナルティが発生するのは、主に「落札から契約までの間」です。ペナルティの内容(程度)は発注者によって違いますが、1〜数ヶ月程度の入札参加停止となることが一般的です。一例として、横浜市の例を引用します。

2 落札候補者等が辞退を行った場合は、ペナルティーを科します。

安易な入札を防止するため、落札候補者となった者が、正当な理由なく落札者となることを辞退した場合は、低入札であるかどうかにかかわらず2か月の一般競争参加停止及び指名停止措置を行います(総合評価一般競争入札における落札予定者となった者についても同様の取扱いとなります。)。なお、配置可能な技術者数より多くの工事を落札してしまった等の場合で、技術者の配置ができないという理由は、正当な理由とはなりませんので、ご注意ください。

横浜市「工事費内訳書の無効及び落札候補者等の辞退について」より引用

「入札書の提出から開札までの間の辞退」については、発注者によって判断が分かれます。全体としては「禁止」するケースが多いようです。入札辞退を検討する場合は、事前に入札運用基準等を確認する必要があります。

  • 入札書提出後の辞退を禁止するケース(越谷市)

第7条 入札参加者は、入札書提出前に限り、入札の参加を辞退することができる。ただし、電子入札の場合でやむを得ない事由が生じたときは、運用基準に基づき、開札前まで辞退することができる。

越谷市「越谷市建設工事請負等競争入札参加者心得」より引用
  • 入札書提出後の辞退を条件付きで認めるケース(川崎市)

5-2 入札書提出後の辞退について

入札参加者の都合により、入札書の提出後に入札を辞退する場合、入札(開札)時間までに発注機関に電話で入札辞退の申入れを行うとともに、電子入札システムにより辞退の理由を明記した辞退届を提出するものとする。ただしICカードの紛失、破損、盗難、名義人の変更、パソコン・インターネット環境等のシステム障害など、やむを得ない理由により、電子入札システムの利用ができない場合、「入札(見積)辞退届」(様式2)を提出するものとする。
辞退届が提出された場合、発注機関は入札参加者に警告の上、辞退を認めるものとする。
なお、警告したにも係らず、再度、入札書の提出後に入札を辞退した者については、指名停止の措置をとることができるものとする。

川崎市「川崎市電子入札運用基準」より引用
  • 入札書提出後の辞退を認めるケース(国土交通省)

5-3 入札書提出後の辞退電子入札システムによる入札書提出後、その開札までの間に入札参加者が入札の辞退を申し入れてきた場合には、これを認めるものとする。 ただし、紙入札業者がいる場合には、入札執行官の開札宣言までの間とする。

国土交通省「電子入札運用基準について」より引用

なお指名競争入札で「指名」を受けた場合、もし入札に参加する予定がないのであれば、原則として「入札辞退届」が必要になります。入札参加資格停止のペナルティを受けるケースもあるため、注意が必要です。

入札辞退届はどうやって出すの?

入札辞退届の提出方法には、大きく分けて「持参」「郵送」「オンライン(電子入札システム)」があります。どの方法で提出できるかは発注元や入札案件によって異なるため、あらかじめ確認が必要です。

加えて、入札辞退届を提出する際の注意点も確認しておきましょう。たとえば郵送する場合の封筒の書き方(特にルールを定めていないケースが多い)や、返還する書類の有無などです。なお電子入札の場合は「操作マニュアル」が公開されているので、こちらも事前にチェックしておきます。

入札辞退届の様式

入札辞退届の様式は、あらかじめ指定されていることが一般的です。ただし入札関連の各様式は発注者や入札案件によって異なります。必ず「指定のもの」を使うよう注意してください。なおWEBサイト上で「様式集」を公開している発注者も少なくありません。あらかじめチェックしておくと良いでしょう(公益財団法人 東京都都市づくり公社「各種様式集」など)。

まとめ

今回の記事では、入札辞退の注意点と入札辞退届の提出方法・様式などについて説明しました。特にペナルティにつながる入札辞退には注意が必要です。入札に参加する際はできるだけ「辞退することがない」よう、しっかりと計画・準備するようにしましょう。

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