さまざまな入札方式の中でも、特に物品調達など比較的少額の契約に利用されることが多い「オープンカウンター方式」。しかし一般競争入札と比べると、具体的な案件の内容や入札に参加するための条件、メリット・デメリットなどについては意外と知られていません。
そこで今回の記事ではオープンカウンター方式の特徴や注意点について、具体例とともにわかりやすく説明していきます。
オープンカウンター方式とは、発注したい案件の見積条件を公開して、複数の事業者から見積りを募る契約方法です。契約相手に見積りを依頼するのは「随意契約」の特徴ですが、オープンカウンター方式には、
という特徴があります。随意契約の一種でありながら、一般競争入札に極めて近い方法といえるでしょう。
オープンカウンター方式を含む随意契約は、主に物品購入やサービス提供など比較的少額な契約で利用されています。その根拠となっているのは「会計法」です(自治体の場合は「地方自治法」と「地方自治法施行令」に同じような規定があります)。
会計法 第29条の3第5項
※第1項と第2項は省略
3 契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で第1項の競争に付する必要がない場合及び同項の競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、指名競争に付するものとする。
4 契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。
5 契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、第1項及び第3項の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約によることができる。
大前提として国(および自治体)が行う契約には入札手続が必要です。しかし上に引用したように、
といった場合には随意契約が認められます。
このうち、特にオープンカウンター方式の随意契約が利用されるのは「予定価格が少額」な場合です(これを「少額随意契約」や「少額随契」といいます)。
もともと少額随契では複数の事業者に見積りを依頼して、その中から契約相手を選ぶ「見積合わせ」が一般的でしたが、近年増えてきたのが、契約条件を公開する「公開見積合わせ」、つまりオープンカウンター方式です。
冒頭に書いた通り、オープンカウンター方式は一般競争入札に極めて近い方法です。しかし一般競争入札のような「入札参加資格の審査」がないため、手続きの流れがスムーズでより参加しやすくなっています。
オープンカウンター方式は国や自治体、それらの外郭団体など、さまざまな団体に利用されています。以下は、実際にオープンカウンター方式で公募されていた案件の一例です。
機関名 | 件名 | 公募年度 | 入札金額(決定額) |
---|---|---|---|
総務省 | 中央合同庁舎第2号館及び総務省第二庁舎 クレジットカード方式による水道料金の決済業務の請負 | 平成31年度 | ※公表なし |
防衛省 | 平成31年度防衛省専門職員採用試験答 案用紙の印刷 | 平成31年度 | 28,800円 |
内閣府 | 「平成30年度国民経済計算年報」印刷製本等作業 | 平成30年度 | 760,000円 |
外務省 | 国賓・公賓等の歓迎用街路旗(レンタル)設置・撤去について | 平成29年度 | ※公表なし |
機関名 | 件名 | 公募年度 | 入札金額(決定額) |
---|---|---|---|
神奈川県 | スタッキングチェアの購入(東部総合職業技術校) | 平成31年度 | 150,444円 |
長野県 | トナーカートリッジ及びトナーカートリッジ用ドラムユニットの購入 | 令和2年度 | 773,575円 |
機関名 | 件名 | 公募年度 | 入札金額(決定額) |
---|---|---|---|
日本郵政株式会社 | 多くの調達をオープンカウンター方式で実施 | ||
独立行政法人都市再生機構 | 震災対策技術展大阪におけるUR都市機構展示ブースの設営・運営業務 | 令和元年度 | ※公表なし |
独立行政法人農林漁業信用基金 | 標的型攻撃メール訓練に係る業務委託 | 平成30年度 | ※公表なし |
オープンカウンター方式の対象になるのは比較的少額の案件です。具体的な金額の基準は「予算決算及び会計令(予決令)」と「地方自治法施行令」に書かれています。
種類 | 国 | 都道府県 及び 政令指定都市 | その他市町村 | 根拠条文 |
---|---|---|---|---|
工事又は製造 | 250万円 | 250万円 | 130万円 | 予決令第99条第2号 地方自治法施行令別表第5 |
財産購入 | 160万円 | 160万円 | 80万円 | 予決令第99条第3号 地方自治法施行令別表第5 |
物件借入 | 80万円 | 80万円 | 40万円 | 予決令第99条第4号 地方自治法施行令別表第5 |
財産売払 | 50万円 | 50万円 | 30万円 | 予決令第99条第5号 地方自治法施行令別表第5 |
物件貸付 | 30万円 | 30万円 | 30万円 | 予決令第99条第6号 地方自治法施行令別表第5 |
それ以外 | 100万円 | 100万円 | 50万円 | 予決令第99条第7号 地方自治法施行令別表第5 |
ちなみに地方公共団体の場合、規則によって上記とは別の金額が設定されている可能性もあります。根拠となるのは以下の条文です。
地方自治法施行令 第167条の2
地方自治法第234条第2項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
1 売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第5上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。
※以下省略
具体的な金額条件などはホームページに掲載されていることも多いので(千葉県の「オープンカウンターのページ」や横浜市の「横浜市公募型見積合せ実施要綱」など)、必ず確認しておきましょう。
オープンカウンターには一般競争入札のような「入札参加資格の審査」はありません。しかし大抵の場合、各機関ごとに入札参加資格が設定されています。
以下は神奈川県の入札資格(参加条件)です。
1 調達課長が定める地域に、法人の場合は本店、個人の場合は主たる事務所を有する者であること。
2 地方自治法施行令167条の4の規定に該当しない者であること。
3 神奈川県暴力団排除条例(神奈川県警察のホームページ)第9条に基づく排除措置対象者に該当しない者であること。
4 神奈川県入札参加資格者名簿に登録されている者又は業者登録申込書を調達課長に提出し、オープンカウンター方式見積合せ参加者名簿に登録されている者であること。
5 神奈川県指名停止等措置要領による指名停止期間中の者でないこと。
このように、特に自治体の場合は「エリア内に参加者の本店・支店があること」といった条件が多いようです。もちろん国や外郭団体にもそれぞれの参加資格があるので、参加を検討する前に確認しておいた方が良いでしょう。
オープンカウンター方式で見積書を提出する前に、事前登録を求める団体もあります。たとえば神奈川県では「業者登録申込書を調達課の担当窓口に提出し、オープンカウンター方式見積合せ参加者名簿の登録を受ける」といった具合です。
他にも「電子入札システムの利用」を使っている団体(千葉県など)の場合、あらかじめ設定が必要もあるので注意が必要です。
オープンカウンター方式を利用する際、特に注意が必要なのは「締め切りまでの期間」です。発注機関や案件によっても異なりますが、公告から1〜数週間程度というケースも珍しくありません。
「気が付いたときには締め切りが過ぎていた」ということがないよう、こまめな情報収集はもちろん、良い条件の公募が見つかったらすぐに見積りを出せるように普段から準備しておきましょう。
オープンカウンター方式は、主に以下のような流れで実施されます。
発注機関のホームページなどに情報が掲載されます。
指定のフォームで作成した見積りを、指定の方法(持参、郵送、FAX、メール、システムへのアップロードなど)で提出します。
有効な見積りのうち、最も低額だった事業者を契約相手に決定します。見積金額が同じ事業者が複数いる場合は「くじ引き」になる場合もあります。
契約相手に決定した事業者に連絡します。
発注機関と事業者の間で契約を締結します。
発注機関のホームページなどで、契約した事業者や契約金額などの情報が公表されます(媒体や公表する情報は発注機関によって異なります)。
オープンカウンター方式の契約は比較的少額ですが、一般競争入札のような手間がないぶんコストパフォーマンスは悪くありません。実績作りにもなるため、得意分野の案件があれば積極的にチャレンジしてみても良いでしょう。
ただし、公示から締め切りまでの期間には要注意です。毎日こまめに情報収集するのが一番ですが、国、自治体、外郭団体などの情報をすべて網羅するのは簡単ではありません。
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