心証が悪くならない入札辞退届の書き方とは?具体的な文例も教えます

入札に参加したものの何らかの事情で入札を辞退する際は、原則として「入札辞退届」が必要です。今回は入札辞退届が必要になるケースと提出のタイミング、そして発注者の心証を悪くしない入札辞退届の書き方などについて、具体例に解説していきます。

入札の辞退には「入札辞退届」が必要

入札に参加することができるのは、原則として契約の意志がある事業者のみです。つまり入札に参加する以上は、落札した際に発注者と契約を交わさなければなりません。

しかし現実問題として、何らかの事情で入札を辞退するケースは十分に考えられます。個別の入札案件でも、そのような場合のために「入札辞退届」の書式や届出手順を用意していることがほとんどです。

ですから入札に参加する際は、たとえ辞退の予定がなくても、「万が一」に備えて入札辞退届について理解しておくことが非常に大切といえるでしょう。

不参加、無効、失格と「辞退」の違い

入札辞退と似ているものに、入札の「不参加」「無効」「失格」があります。まずはそれぞれの意味と、辞退との違いについて確認します。

「不参加」と「辞退」の違い

ここでいう不参加とは、初めから入札に参加しないことではありません。むしろいったんは入札に参加しておきながら、なんの連絡や届出もなしに入札手続きをとりやめることを「不参加」と呼びます。この場合、辞退との違いは「入札辞退届を提出するかどうか」です。

「不参加」の事業者には「1〜数ヶ月程度の入札参加停止」などのペナルティが課せられるケースもあるため、入札を途中で取りやめたい場合は必ず入札辞退届を提出するようにしてください。

「無効」と「辞退」の違い

入札の「無効」とは、書類上のミスなどにより入札手続きが効力を発生しないことです。入札の意思を示したにもかかわらず契約に至らないという意味では辞退と同じですが、辞退の場合は(いったんは)手続きが有効に開始しているという点で大きく異なります。

「失格」と「辞退」の違い

「失格」とは、金額などの条件が基準を満たさない(最低価格より低い価格で入札している、予定価格をオーバーしている)などの事情で落札資格を失うことです。入札手続きそのものが有効という点では辞退と同じですが、辞退とは違い、入札者側の意思表示と関係なく手続きが終了します。

入札辞退届の提出タイミング

「入札辞退届」を提出したからといって、どのような場合でも「穏便」に入札を辞退できるとは限りません。また入札辞退届に関するルールは、発注者や入札案件ごとに異なることもしばしばです。

ここでは入札辞退届を提出するタイミングと、ペナルティが発生するかもしれない一般的なケースについて説明します。

一般競争入札と指名競争入札の提出タイミング

入札辞退届を提出できる(ペナルティなしで辞退できる)タイミングは、「応札(入札書の提出)前」です。一般競争入札であれば「入札公告〜入札書の提出前」、指名競争入札なら「指名通知〜入札書の提出前」ということになります。

いったん入札書を提出しても、参加者全員の入札価格が予定価格を超えていて再入札となった場合は「再入札の告知〜入札書の提出前」のタイミングで入札辞退が可能です。再入札は最大3回程度まで行われるため、再入札にともなう入札辞退のチャンスも最大3回程度といえます。

入札辞退のペナルティについて

これに対し入札書の提出以降に入札辞退をする場合、何らかのペナルティを受けることがほとんどです(入札辞退届の有無は関係ありません)。

ペナルティの内容は発注者や入札案件によってさまざまですが、一般には「一定期間(1〜数ヶ月程度)の入札参加停止」です。

なお発注者によっては、入札書の提出〜開札までの間の入札辞退を原則無条件で認めたり(国土交通省の電子入札システム)、何らかの条件付きで(たとえば「1回に限り」など)認めているところもあります。

入札辞退届の書き方・例文

入札辞退届は、他の入札関連書類と同様に「様式」があります。ここでは具体的な事例をいくつかみてみましょう。

入札辞退届は発注者ごとに様式がある

入札辞退届の様式は発注者ごとに異なります。記入する内容も、工事名と事業者名を記入するだけの簡単なものから「辞退の理由」に丸をつけさせるもの、具体的な理由を記入するものなどさまざまです。

心証を悪くしない「辞退理由」の文面

入札辞退届を受け取る相手(担当者)も人間ですから、特に入札辞退届に「理由」を記入する場合は、相手の心証を悪くしないよう気を配ることも大切です。

とはいえほとんどの場合、具体的な文面について決まりはありません。一般論としては辞退しなければならない事情をシンプルに表現するのが無難で、たとえば以下のように書くことができます。

『時間的な理由』で入札を辞退する場合

  • 契約期間内に完了することが困難なため
  • 指定期間までの履行が難しいため
  • 業務の増加により作業時間を確保できないため
  • 締切日までに見積りの作成が困難なため

『人的な理由』で入札を辞退する場合

  • 作業員の確保が困難になったため
  • 主任技術者が配置できなくなったため
  • 業務の増加により人員を確保できないため
  • 必要な人員の募集が困難になったため

『技術的な理由』で入札を辞退する場合

  • 自社の技術で要求水準を満たすのが難しいため
  • 要求仕様が自社の取扱分野外であったため
  • 自社の機材では要求仕様を満たせないため

『金銭的な理由』で入札を辞退する場合

  • 予定価格以下での入札が難しいため
  • 自社の積算では予定価格を超えてしまうため
  • 予定価格で採算が合わないことが判明したため

『その他の理由』で入札を辞退する場合

  • 必要な許可資格を保有していないため
  • 業務の増加により作業場所を確保できないため
  • 休業を予定しているため
  • 事業規模の縮小を予定しているため

事情をシンプルにといっても、発注者側に非があるような言い方やぶっきらぼうな言い方など、表現方法によっては相手の心証を害する可能性があります。どのような事情があるにしても、言葉の選び方には十分注意してください。

入札辞退届の記入例

記入例その1「埼玉県深谷市の入札辞退届」

深谷市の入札辞退届は、辞退理由を「選んで丸をつける」タイプです。もし「その他」を選ぶ場合は「心証を悪くしない「辞退理由」の文面」を参考に、1行程度のシンプルな理由を記入しましょう。

提出方法は基本的に電子メールかFAX、(入札執行中に限り)持参です。

記入例その2「千葉県南房総市の入札辞退届」

南房総市の入札辞退届も理由に丸をつけるタイプで、その他の記入事項も比較的シンプルです。

ただし提出方法は「持参」か「郵送」に限定されている(メールはFAXでは提出できない)ことに注意が必要です。

記入例その3「東京都品川区の入札辞退届」

品川区の入札辞退届は「具体的な理由」を記入するタイプです。記入の際は「心証を悪くしない「辞退理由」の文面」を参考にしてください。なお作成上の注意として「紙質はできる限り再生紙」「規格は日本工業規格A4版」といった指定があります。心証を悪くしないためにも、このような注意事項にはしっかり従うことをおすすめします。

記入例その4「東京都調布市の入札辞退届」

調布市の入札辞退届は非常にシンプルです。記入項目は「(入札案件の)件名」「提出日」「住所・会社名・氏名」と押印のみで、理由を記入する項目はありません。

なお提出方法は持参か郵送になります。

まとめ

今回は入札を辞退する際に提出する「入札辞退届」について説明しました。ペナルティを受けずに入札辞退をするタイミングや入札辞退届の具体的な書き方などは、いますぐ入札辞退をする予定がなくても、覚えておいて損はありません。思わぬペナルティを招かないようにするためにも、ぜひこの記事を参考にしてください。

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