経営事項審査(経審)とは?取得の流れから結果の見方、点数の仕組みまで解説

建設業者が公共工事の入札に参加する際に必要となる「経営事項審査(経審)」。この記事では経審の概要に加え、経審を受けるメリット・デメリット、経審を受ける場合の注意点や手続きの流れ、結果通知書に記載される「点数」と入札「ランク」の関係などについて解説していきます。

経審とは?

経審とは「経営事項審査」の略で、建設業者の経営事項(経営状態、経営規模、技術力など)を審査し点数化することです。

建設業者が公共工事の入札に参加する場合は、経審を必ず受けなくてはなりません。なお建設業には「土木一式工事」など29の種類がありますが、経審は各業種ごとに受けます。

経審の審査項目は「経営規模・経営状態・技術力・その他の項目」の4つです。審査は建設業の許可行政庁と、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関がそれぞれ分担して行います。

まず「経営規模・技術力・その他の項目」を審査するのは、以下の「許可行政庁」です。

大臣許可の建設業者北海道開発局長
地方整備局長
沖縄総合事務局長
知事許可の建設業者都道府県知事

「経営状態」を審査するのは、以下の登録経営状況分析機関です(平成30年4月現在)。

登録
番号
機関の名称事務所の所在地電話番号
1(一財)建設業情報管理センター東京都中央区築地2-11-2403-5565-6131
2(株)マネージメント・データ・リサーチ熊本県熊本市中央区京町2-2-37096-278-8330
4ワイズ公共データシステム(株)長野県長野市田町2120-1026-232-1145
5(株)九州経営情報分析センター長崎県長崎市今博多町22095-811-1477
7(株)北海道経営情報センター北海道札幌市白石区東札幌一条4-8-1011-820-6111
8(株)ネットコア栃木県宇都宮市鶴田2-5-24028-649-0111
9(株)経営状況分析センター東京都大田区大森西3-31-803-5753-1588
10経営状況分析センター西日本(株)山口県宇部市北琴芝1-6-100836-38-3781
11(株)NKB福岡県北九州市小倉北区重住3-2-12093-982-3800
22(株)建設業経営情報分析センター東京都立川市柴崎町2-17-6042-505-7533

表の引用:国土交通省「登録経営状況分析機関一覧」より

ちなみに一番上の「一般財団法人建設業情報管理センター(通称CIIC)」は47都道府県と3建設業保証会社によって設立された団体で、平成16年3月の建設業法改正までは「国が指定する唯一の分析機関」でした。法改正後は「登録番号1」の登録分析機関として、累計450万件以上という数多くの審査案件を手がけています。

経審を取得するメリット・デメリット

経審を取得するメリットは「公共工事の入札に参加できる」ことです。特に平成6年改正の建設業法以降は、公共工事の入札に経審が必須となりました。

しかし経審のメリットは他にもあります。建設業者としてのポテンシャルが客観的な数字(点数)で評価され、入札参加資格者として公表されるため、取引先から信用を得やすくなるのです。元請からの受注を増やしたい建設業者にとって、経審は魅力的な制度といえるでしょう。

一方で、経審を受けるには費用がかかります(後ほど説明します)。ただし経審の費用はそれほど高いものではありません。

経審の流れ

経審の流れは2段階に分けられますが、経審を受ける前にもいくつか前提となる手続きが必要です。ここでは初めから順を追って説明します。

経審を受ける前の手続き

経審を受ける前に必要な手続きは「建設業許可の取得」「決算変更届の提出」です。

まず建設業許可では、29種類の建設業の中から自社に合った業種を取得します。許可を与えるのは国土交通大臣、もしくは都道府県知事です。

建設業許可を取得した建設業者は、毎年の決算日から4か月以内に決算変更届を提出するよう義務付けられています(経審を受けるかどうかは関係ありません)。具体的には決算期の財務諸表と、決算期に行なった工事の経歴書などを許可行政庁に提出します。

ここまでで経審の事前準備は完了です。

第一段階「経営状況分析申請」

経審の第一段階は、登録経営状況分析機関による分析と点数化です。決算変更届で提出した財務諸表を元に「経営状況評点」が算出され、「経営状況分析結果通知書」で通知されます。

なお「経営状況分析申請」は、建設業許可の種類に関係なく行われます。依頼先の分析機関は自由に選べますが、どの分析機関を選んでも点数に変わりはありません。

「経営状況分析申請」から「経営状況分析結果通知書」の通知までは、おおむね1週間程度です。

第二段階「経営規模等評価申請」

第二段階は許可行政庁による評価です。建設業許可の業種ごとに経営規模、技術力、社会性などが評価されます。

分析機関から送られた「経営状況分析結果通知書」の内容も加味したうえで、総合的な評価が「総合評定値通知書」に記載され、建設業者に通知されます。

「経営規模等評価申請」から「総合評定値通知書」の通知までの期間は、およそ1ヶ月程度です。

結果通知書の見方と点数の仕組み

最終的に通知される「総合評定値通知書」には、さまざまな数字が記載されます。その中で特に注目すべき数字が「総合評定値(P)」です。

「総合評定値(P)」とは

「総合評定値(P)」とは、経審の基準となる点数で、

総合評定値(P)=0.25 X1 + 0.15 X2 + 0.2 Y + 0.25 Z + 0.15 W

という式で導かれます。式の中にあるXやYなどのアルファベットは、以下のそれぞれの項目について評価した値(評点)を表します。

経営規模X1①完成工事高(許可業種別)
X2①自己資本額
②利払前税引前償却前利益
経営状況Y①負債抵抗力
②収益性・効率性
③財務健全性
④絶対的力量
※経営状況分析の結果
技術力Z①元請完成工事高(許可業種別)
②技術職員数(許可業種別)
その他の審査項目
W①労働福祉の状況
②建設業の営業継続の状況
③防災活動への貢献の状況
④法令遵守の状況
⑤建設業の経理の状況
⑥研究開発の状況
⑦建設機械の保有状況
⑧国際標準化機構が定めた規格の取得の状況
⑨若年の技術者及び技能労働者の育成
 及び確保の状況

表の引用:国土交通省「企業評価制度 関連資料集」より

「総合評定値(P)」の最高点は「2,136点」、最低点は「281点」です。平均点は700点前後とされているので、この点数から、他社と比較した自社のおおまかなレベルを知ることができるでしょう。

ランク付けについて

建設業者は「総合評定値(P)」によってA〜Dにランク付けされます( 地方自治体によって独自格付けもあり)。ランクが高いほど、発注予定価格の高い公共工事に入札できるという仕組みです。

ランク付けの基準は発注元となる官公庁ごとに異なりますが、一般には発注量と企業数のバランスを図りながら、 総合点数の高い建設業者から高ランクに割り振られます。

もし発注予定価格の高い公共工事を受注したいのであれば、まずは「総合評定値(P)」の点数を上げることが重要です。

点数を上げるにはどうすればいい?

「総合評定値(P)」の点数を上げるには、まずX1やX2などの評価項目(評点)をしっかり把握することが重要です。そのうえで、自社にとって上げやすい評点から集中的に取り組んでいくと良いでしょう。

なお「完成工事高が高く技術者の数が多い会社」は、経営規模(X1、X2)や技術力(Z)の項目で高い評価を受けやすいといわれています。

詳しくは「経審の点数をアップさせるには?5つの評点を上げるコツや資格について解説」の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

経審にかかる費用

経審にかかる費用は大きく分けて2種類です。

①経営状況分析機関に支払う審査手数料

経営状況分析の申請にかかる費用です。具体的な金額は9,000円〜13,880円で、分析機関によって多少変わります。

②許可行政庁に支払う審査手数料

経営規模等評価の申請と総合評定値算出の請求にかかる費用です。基本となる8,500円に加えて、審査を受ける建設業の種類ごとに2,500円が加算されます。

経審の有効期限

経審の有効期間は「審査基準日(事業年度終了日)」から1年7か月です。

ただし事業年度が終了するとまず確定申告(事業年度終了日から2ヶ月以内)や決算変更届(事業年度終了日から4ヶ月以内)を行うため、経審を受けるのはその後になります。

経審の手続き自体にも2ヶ月弱かかるため、経審の有効期限を途切れさせないためには速やかな手続きが必要です。

まとめ

今回は、公共工事の入札に必須となる「経審」について説明しました。特に経審を受けるための前提条件や手続きの流れ、経審の仕組みや点数の見方などは、経審を受けるすべての建設業者にとって重要な知識となります。これから公共工事の受注を目指す方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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