公共工事の効率化や、品質確保などを目的に定められる「公共工事標準仕様書」。すでに公共工事を受託した建設業者はもちろん、これから入札を検討する方にとっても重要な資料のひとつです。この記事では、公共工事標準仕様書の種類や内容、入手方法などについて説明していきます。
公共工事標準仕様書(以下、仕様書)とは「国家機関の建築物の整備や保全指導等を効率的かつ的確に実施する」ために、国が定める基準(官庁営繕の技術基準)のひとつです。
仕様書の目的は大きく分けてふたつあります。
ひとつめは「工事の品質確保」です。公共工事の予算はあらかじめ決まっているため、工事の際は予算に合わせた効率的な施工が欠かせません。「公共工事」である以上、どの建設業者が受注しても、工事の品質は一定水準に保たれる必要があります。こうした必要を満たすための標準的な仕様(基準)を表したものが仕様書というわけです。
もうひとつは「事務作業の効率化」です。公共工事受注後は使用する材料や機材、工法などに合わせてさまざまな「設計図書」を作成する必要がありますが、仕様書を「工事の設計図書に適用する」旨を記載すれば、仕様書そのものが設計図書のひとつとみなされます。結果として、事業者の負担軽減・業務の効率化に役立つというわけです。
ちなみに国土交通省が定める「官庁営繕の技術基準」は以下の6種類に分けられ、各種類ごとに多数の基準やガイドライン、仕様書、資料、標準図などが公表されています。今回の記事で取り上げる仕様書は、3番目にある施設整備関連基準の一部です。
これらの基準は、建設技術の変化(進歩)や社会ニーズの変化に合わせて定期的に見直されています。仕様書も3年ごとに改訂されており、現在(2021年2月)は「平成31年版」が最新版です。
仕様書には、大きく分けて5つの種類があります。
公共建築工事標準仕様書は「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で発注される公共建築工事を対象に、新築工事に使用する材料・機材・工法・試験などの標準的な仕様をまとめたものです。
公共建築工事標準仕様書は、工事の種類に合わせて以下のように分かれています。
なお文部科学省が発注する公共工事でも原則として「国土交通省の建築工事標準仕様書」が使用されますが、文教施設(学校など)ならではの事情に合わせて
の各仕様書が追加されています。
公共建築改修工事標準仕様書は「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で発注される公共建築改修工事を対象に、改修工事に使用する材料・機材・工法・試験などの標準的な仕様をまとめたものです。
公共建築改修工事標準仕様書には以下の種類があります。
公共建築木造工事標準仕様書は「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で発注される公共建築木造工事を対象に、木造の公共建築工事に使用する材料などの標準的な仕様をまとめたものです。
建築物解体工事共通仕様書は「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で発注される建築物解体工事を対象に、解体工事に使用される材料・機材・工法・試験などの標準的な仕様をまとめたものです。
公共建築設備工事標準図は公共工事の設計図に使用する図(記号)をまとめたもので、各仕様書とセットで利用されます。
公共建築設備工事標準図には以下の種類があります。
最新版の仕様書は、PDFもしくは書籍で入手できます。
PDFで作成された仕様書は、国土交通省と文部科学省のWEBサイトから無料でダウンロードできます(以下はリンクです)。
書籍版の仕様書は、株式会社建設出版センターのサイトから直接購入できます。価格は2,420〜5,500円(税込)です。
公共工事は案件ごとに条件が変わるため、仕様書に書かれている基準すべてを一律に適用できるとは限りません。公共工事を受託した際は「技術基準等の概要」や本文をしっかり確認しながら、どの基準をどのように活用するか判断することが必要です。
どうしても不明な点があれば、国土交通省の「公共建築相談窓口」に相談するのも良いでしょう。専用のメールアドレス(hqt-eizensoudan/at-mark/gxb.mlit.go.jp ←送信の際は「/at-mark/」を「@」に修正すること)への問い合わせに加え、
の中から最寄りの窓口に電話で相談することもできます。
今回は、さまざまな種類がある「公共工事標準仕様書」について説明しました。仕様書(と標準図)は国土交通省のものだけで10種類あり、さらに文部科学省からも6種類の「特記基準」が公表されています。特にこれから公共工事の入札に参加する方は、この記事を参考にしながら早めに仕様書を手に入れ、内容を確認しておくようおすすめします。