WTOの政府調達協定に基づいて、海外の企業にも参加が認められる「WTO対象の入札案件」。世界中の企業がライバルとなるものの、契約金額の大きさが魅力です。
今回はWTO対象の入札案件の概要に加え、入札情報の入手方法と入札参加方法について説明します。
WTO対象の入札案件とは、WTOが定めた「政府調達に関する協定」に基づいて、「海外の企業にも入札参加が認められる案件」のことです。
そもそもWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)とは、貿易に関する国際ルールを制定したり、貿易をめぐる国同士の対立や課題を解決するための取り組みを行う国際機関です。
今回説明する政府調達に関する協定も、そうした取り組みのひとつとして誕生しました。
WTOの政府調達に関する協定(GPA:Agreement on Government Procurement)とは、政府や自治体などが行う入札案件(調達)において「自国と他国の業者を差別しない」ことを義務付ける国際条約です。現在、この協定には21の国や地域が参加しています(2021年1月。外務省ホームページ『WTO政府調達協定』より)。
アルメニア・豪州・カナダ・欧州連合(EU)・香港・アイスランド・イスラエル・日本・韓国・リヒテンシュタイン・モルドバ・モンテネグロ・オランダ領アルバ・ニュージーランド・ノルウェー・シンガポール・スイス・台湾・ウクライナ・英国・米国
アルバニア・ブラジル・中国・ジョージア・ヨルダン・カザフスタン・キルギス・北マケドニア・オマーン・ロシア・タジキスタン
アフガニスタン・アルゼンチン・バーレーン・ベラルーシ・カメルーン・チリ・コロンビア・コスタリカ・コートジボワール・エクアドル・インド・インドネシア・マレーシア・モンゴル・パナマ・パキスタン・パラグアイ・フィリピン・サウジアラビア・セーシェル・スリランカ・タイ・トルコ・ベトナム
政府調達に関する協定の対象は加盟国や加盟地域の政府機関などです。日本の場合、以下に挙げる機関すべてが対象になります(カッコ内は外務省ホームページへのリンク)。
協定の対象となる入札案件(WTO対象の入札案件)は、協定で定められた基準額以上の入札案件です。日本では以下に挙げるものが対象となります(カッコ内は外務省ホームページへのリンク)。
「協定で定められた基準額」は為替変動を考慮して2年に1度改訂されます。現在の基準額は2020年4月1日に改訂されたもので、具体的な金額は以下の通りです(外務省ホームページ『政府調達協定及び我が国の自主的措置の定める「基準額」及び「邦貨換算額」』より)
中央政府の機関 | 基準額 |
---|---|
物品 | 1500万円 |
建設サービス | 6億9000万円 |
建築のためのサービス、エンジニアリング・サービス、その他の技術的サービス | 6900万円 |
その他のサービス | 1500万円 |
地方政府の機関 | 基準額 |
---|---|
物品 | 3000万円 |
建設サービス | 23億円 |
建築のためのサービス、エンジニアリング・サービス、その他の技術的サービス | 2億3000万円 |
その他のサービス | 3000万円 |
その他の機関 | 基準額 |
---|---|
物品 | 1900万円 |
A群(日本郵政公社を承継した機関を除く)の建設サービス | 23億円 |
B群及び日本郵政公社を承継した機関の建設サービス | 6億9000万円 |
建築のためのサービス、エンジニアリング・サービス、その他の技術的サービス | 6900万円 |
その他のサービス | 1900万円 |
WTO対象の入札案件は国内外のライバルが競争相手です。
落札〜契約のハードルは国内事業者のみを対象とした入札案件と比べて高くなりますが、契約を勝ち取ることができれば大きな利益と実績が見込めます。
WTO対象の入札案件は「一般競争入札」「指名競争入札」「随意契約」のいずれかで行われます。それぞれの内容や違いについては以下の記事も参考にしてください。
『代表的な入札方式をわかりやすく解説!特徴からメリット・デメリットまで』
『特命随意契約とは?他の契約との違いや法令上の根拠、随意契約理由書について解説』
入札の参加手順や参加条件は他の(国内事業者のみの)入札案件と基本的に変わらず、調達機関ごとの、あるいは全省庁統一の「入札参加資格」をあらかじめ取得しなければなりません。
入札参加資格については以下の記事で解説しています。
『入札参加資格とは?種類や取得のための要件、等級についてわかりやすく解説します』
『全省庁統一資格とは?取得すると何ができる?取得手順や等級も解説』
『経営事項審査(経審)とは?取得の流れから結果の見方、点数の仕組みまで解説』
資格審査の申請は日本の法人でも外国の法人でも行うことができますが、外国の親会社の入札参加資格を日本の子会社が申請するといったことも可能です。
WTO対象の入札案件情報は、入札期日の少なくとも40日前までに「官報(県報)」などで公告されます。他に、各調達機関の窓口で情報を入手することも可能です。
インターネットで情報を入手する場合はJETROの「政府公共調達データベース」を利用できます。
情報が掲載されるタイミングは、国・独立行政法人の案件は官報掲載日の15時〜翌営業日中、都道府県・政令指定都市・地方独立行政法人の案件は官報掲載日の翌営業日12時〜同日中です。
検索画面では「国・独立行政法人」「都道府県・政令指定都市・地方独立行政法人」のそれぞれで、
などの条件を指定して案件を絞り込めます。案件名があらかじめわかっていれば、キーワード欄から直接検索することも可能です。
もうひとつ、別の情報入手方法もあります。「入札ネット+α」では掲載する案件のデータ項目(備考欄)にWTO案件を記載しているため、政府公共調達データベースと同じようにWTOに絞った検索が可能です。
もちろんWTO対象ではない小規模な入札案件も含めて、自社の条件に合った入札案件を一度に検索することもできます。
入札ネット+αは14日間無料でトライアルが出来ます。ぜひこちらからお申し込みください。
WTO対象の入札案件はいずれも一定額以上の高額案件ばかりです。国外の事業者も入札できるようになるため競争は激しくなりますが、受注できれば大きな利益と実績が見込めるため、チャレンジする価値は非常に高いといえるでしょう。
これから事業を大きく拡大していきたい事業者の方は、ぜひ「入札ネット+α」も活用しながらWTO案件の受注を目指してください。