建設業の経営者が使える助成金・補助金について【2022年最新版】

助成金や補助金は国や自治体が提供する支援制度です。豊富な種類と条件に当てはまる事業者ならだれでも利用できるのが大きな魅力ですが、一方で「種類が多すぎてよくわからない」「どうやって利用すればよいかわからない」という声も多く聞かれます。

この記事では2022年の最新情報から、建設業の事業者にとって利用価値の高い助成金・補助金を紹介していきます。

建設業事業者向けの支援制度について

建設事業者が利用できる支援制度のなかで、特に人気が高いのが「助成金」や「補助金」です。助成金と補助金はどちらも「返す必要のないお金」で、膨大な種類(およそ3,000以上)に上る制度の中から、それぞれの会社の規模や事業形態、ニーズに合ったものを利用できます。

助成金とは

助成金とは、主に厚生労働省などが管轄する事業支援金制度です。雇用の維持や増加、人材育成、労働環境の改善などを目的とするものが多く、その中には建設事業者にとって使い勝手が良いものも少なくありません。

また助成金は後で説明する補助金と違い、原則として条件を満たすすべての事業者が支給対象となります(申請手続は必要です)。募集期間も(補助金と比べて)比較的長いものが多いのが特徴です。

支給条件は助成金の種類ごとに異なりますが、以下の条件はすべての助成金に共通しています。

  1. 労働保険の適用事業所であること
  2. 労働保険料を滞納していないこと
  3. 法律で義務付けられた帳簿類(法定3帳簿)を備えていること
  4. 過去1年間に間労働関係法令に違反していないこと
  5. 3年度前の期間にわたり事業主都合の解雇や退職勧奨をしていないこと

労働保険の加入や労働保険料の支払いが条件となっているのは、助成金が労働保険料から支払われるためです。もちろん国や自治体の制度を利用する以上、法令遵守が条件となるのも当然といえるでしょう。

なお「法定3帳簿」とは、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳のことです。これらは補助金の利用とは関係なく備えて置く必要があり、違反した事業者には30万円以下の罰金が科されます。

補助金とは

補助金とは国や自治体の政策目標に合わせて募集される事業支援金です。主に経済産業省(中小企業庁)のものを中心に、年度ごとにさまざまな補助金が募集されています。

助成金との大きな違いは、募集期間と支給対象です。

補助金の募集期間は1か月程度と短いものが多く、また必要書類を提出したからといって必ずしも支給されるわけではありません。応募時の審査に加え、事業期間終了後の事後審査をクリアした事業者だけが補助金を受け取ることができます。

なお補助金は原則として「事後払い」です。あらかじめ補助金事業を遂行できるだけの自己資金や借入資金を用意する必要があるため、多少ハードルが高いと感じられることもあるでしょう。

とはいえ、国や自治体の政策目標と自社の事業内容が一致しているのであれば、ぜひとも活用したい制度です。

助成金・補助金のメリットと特徴

助成金や補助金には、さまざまなメリットと特徴があります。

経営状態の改善に役立つ

最も大きなメリットは「経営状態の改善に役立つ」というものです。助成金によって雇用を維持したり、補助金によって新規事業の費用負担が軽減されるケースなどはその代表的な例です。

加えて助成金や補助金を申請する際には法定帳簿をきちんと整えたり、事業計画書を新たに作成したるするため「自社の経営状態を見つめ直す」機会にもなります。いままで気がつかなかった経営課題を発見することで、仮に(結果として)補助金が支給されなかったとしても、その後の経営改善につながる可能性があります。

豊富な種類がある

助成金や補助金の種類は3,000以上とされ、どのような業種や事業者でも自社のニーズに合ったものを見つけることが可能です。特に人材育成や労働環境の整備などの助成金は建設事業者とも相性が良いでしょう。

ただし助成金や補助金の中には、ひとつの会社が重複して受給したり繰り返し受給することを認めていないものも少なくありません。利用したいと思っている助成金・補助金がある場合は、支給条件や禁止事項をしっかり確認するようにしてください。

自社で情報を探しきれない場合は、社会保険労務士(助成金の場合)や行政書士(補助金の場合)といった専門家に相談するのもお勧めです。

電子申請が可能

従来、助成金や補助金の申請は「紙」で行ってきました。膨大な書類を印刷したりコピーしたりするのは大きな手間でしたが、最近では「jGrants(ジェイ・グランツ)」というシステムを使った電子申請に対応するものも増えてきました。

電子申請は申請の手間が簡単で、申請コストの削減にもつながります。また過去の申請情報も手軽に閲覧できるのも大きなメリットといえます。

建設業者が活用できる主な助成金

ここでは厚生労働省が管轄する助成金の中から、特に建設事業者にお勧めのものを紹介します。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは、就業経験が少ない求職者を「原則3か月間」試用できる制度です。試用期間中に労働者の適正や能力を見極めることができるため、(労働者と雇用主の)互いのミスマッチを防ぐことができます。

令和4年現在、トライアル雇用には

  • 一般トライアルコース
  • 新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
  • 新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース

の3コースがあります。

一般トライアルコース/新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース

対象者以下の要件をすべて満たす事業者・常用雇用(一週間の所定労働時間が30時間以上の無期雇用)を希望している

・紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
・紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている・妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
・55歳未満で、ハローワーク等で担当者制による個別支援を受けている
・就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する

※当面の間は、以下の要件をすべて満たす場合も対象となる
・常用雇用(一週間の所定労働時間が30時間以上の無期雇用)を希望している
・紹介日において、離職している(シフト制労働者等のシフト減少も含む)
・紹介日において、就労経験のない職業に就くことを希望している
助成金額最大4万円(最長3か月)
※対象労働者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は1人あたり月額5万円

新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース

対象者以下の要件をすべて満たす事業者・短時間労働の常用雇用(一週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の無期雇用)を希望している
・紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
・紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている・妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
・55歳未満で、ハローワーク等で担当者制による個別支援を受けている
・就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する

※当面の間は、以下の要件をすべて満たす場合も対象となる
・短時間労働の常用雇用(一週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の無期雇用)を希望している
・紹介日において、離職している(シフト制労働者等のシフト減少も含む)
・紹介日において、就労経験のない職業に就くことを希望している
助成金額最大2.5万円(最長3か月)

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金とは、魅力ある職場づくりやそれによる人材の確保・定着を目的として、労働環境の向上などを図る事業主が利用できる助成金です。現在は9種類が用意されていて、そのうち建設事業者に特化しているのは次の3コースです。

  • 雇用管理制度助成コース(建設分野)
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

雇用管理制度助成コース(建設分野)

対象者①人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の支給を受けた上で本助成コースが定める若年者及び女性の入職率に係る目標を達成した中小建設事業主
②雇用する登録基幹技能者等の賃金テーブル又は手当を増額改定した中小建設事業主
助成金額①第1回:57万円(72万円)、第2回:85.5万円(108万円)
②1人あたり年額6.65万円(8.4万円)または3.32万円(4.2万円)
※カッコ内は「生産性要件が認められる場合」

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)

対象者若年および女性労働者の入職や定着を図ることを目的とした事業を行った建設事業主または建設事業主団体
助成金額・中小建設事業主は支給対象経費の3/5(3/4)
・中小建設事業主以外の建設事業主は支給対象経費の9/20(3/5)
※雇用管理研修等を受講させた場合は1人あたり日額8,550円(10,550円)を最長6日間加算
※カッコ内は「生産性要件が認められる場合」
・中小建設事業主団体は支給対象経費の2/3
・中小建設事業主団体以外の建設事業主団体は支給対象経費の1/2

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

対象者①被災三県に所在する作業員宿舎、作業員施設、賃貸住宅を賃借した中小建設事業主
②自ら施工管理する建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した中小元方建設事業主
助成金額①支給対象経費の2/3
②支給対象経費の3/5(3/4)
※カッコ内は「生産性要件が認められる場合」

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、雇用する労働者のキャリア形成促進を目的とした「職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等」や「教育訓練休暇制度」を取り入れる事業主を支援する制度です。現在は計7コースが用意されており、そのうち次の2コースが建設事業者に特化しています。

  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース

建設労働者認定訓練コース

対象者①【経費助成】認定訓練を行った中小建設事業主
②【賃金助成】雇用する建設労働者に有給で認定訓練を受講させた中小建設事業主
助成金額①広域団体認定訓練助成金の支給または認定訓練助成事業費補助金における補助対象経費の1/6
②1人あたり日額3,800円(生産性を向上させた場合は1,000円増額)

建設労働者技能実習コース

対象者雇用する建設労働者に有給で技能実習を受講させた建設事業主
助成金額【経費助成】
20人以下の中小建設事業主:支給対象費用の3/4(被災三県は10/10)
21人以上の中小建設事業主:35歳未満は支給対象費用の7/10、35歳以上は支給対象費用の9/20(被災三県は4/5)
中小建設事業主以外の建設事業主:支給対象費用の3/5(女性の建設労働者に技能実習を受講させた場合のみ)
※上記のいずれも、生産性を向上させた場合は3/20を増額

【賃金助成】(ひとつの技能実習につき最長20日間)
20人以下の中小建設事業主:1人あたり日額7,600円(8,360円)
21人以上の中小建設事業主:1人あたり日額6,650円(7,315円)
※カッコ内は)受講者が建設キャリアアップシステム技能者情報登録者の場合
※生産性を向上させた場合、20人以下の中小建設事業主は1人あたり日額2,000円、21人以上の中小建設事業主)は1人あたり日額1,750円を増額

職場環境改善計画助成金

職場環境改善計画助成金とは、事業者がストレスチェック実施後の集団分析結果を踏まえて専門家による指導に基づき職場環境改善計画を作成し、その計画に基づいて職場環境の改善を実施した場合に

「指導費用」を助成する制度です。職場環境改善計画助成金には2つのコースがあり、このうち「建設現場コース」建設事業者に特化しています。

建設現場コース

対象者以下の要件をすべて満たす事業者
・労災保険の適用事業であること
・元方事業者及び関係請負人の労働者数が常時50人以上の建設現場であること
助成金額1建設現場あたり100,000円

建設業者が活用できる主な補助金

補助金にもさまざまな種類がありますが、ここでは建設事業者を含むあらゆる事業者が利用できる代表的なものを紹介します。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツール(パッケージソフトの本体費用、クラウドサービスの導入・初期費用など)を導入する際に負担した費用を補助する制度です。

デジタル化基盤導入類型

対象者ITツール等を導入する中小企業、小規模事業者
補助対象50万円以下のITツール50万円超〜350万円のITツールPC等レジ等
補助割合3/42/31/21/2

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、、中小企業や小規模事業者等が取り組む「革新的サービス開発」「試作品開発」「生産プロセスの改善」を行うための設備投資等を補助する制度です。

一般型・グローバル展開型

対象者革新的サービス開発などのために設備投資を行う中小企業、小規模事業者
補助割合・通常枠:1/2
・小規模事業者:2/3
・低感染リスク型ビジネス枠:2/3
※新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために前向きな投資を行う事業者のための特別枠
上限金額・一般型:1,000万円
・グローバル展開型:3,000万円

持続化補助金

持続化補助金とは、小規模事業者が販路開拓等の取り組みを行う際の費用を補助する制度です。

対象者販路開拓に取り組む小規模事業者
補助割合2/3
※成長・分配強化枠の一部の類型において、赤字事業者は3/4
上限金額・通常枠:50万円
・成長・分配強化枠(賃上げや事業規模の拡大):200万円
・新陳代謝枠(創業や後継ぎ候補者の新たな取組):200万円
・インボイス枠(インボイス発行事業者への転換):100万円

まとめ

今回は建設事業者が利用できる主な助成金や補助金を簡単に紹介しました。ここに挙げたものの他にも多くの助成金や補助金が存在していますので、ぜひ専門家(社労士、行政書士)の力を借りながら自社に最適な支援制度を探してみてください。

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