グリーンビルディングとは?世界で注目される理由と建設業者のメリットについて解説

近年、世界中の建設業界で注目を集める「グリーンビルディング」

この記事ではグリーンビルディングの内容はもちろん、国内外でグリーンビルディングへの取り組みが進む背景や建設事業者にとってのメリットなどをわかりやすく解説していきます。

グリーンビルディングについて

2000年代以降、「グリーンビルディング」という言葉を見聞きする機会が増えてきました。特にここ数年はグリーンビルディング市場が急速に伸びているといわれ、建設事業者にとって大きなビジネスチャンスとなっています。

グリーンビルディングとは

グリーンビルディングとは「環境性能の高い建物」「環境に配慮した建物」を指す言葉です。主に建物の維持や運営に必要なエネルギーの効率化(省エネルギー化)や、水使用量の削減、施設の緑化といった手法が用いられることから、環境だけでなく「持続可能性」や利用者の「ウェルビーイング」にも好ましい影響を与えるとされています。

注目を集める背景と効果

グリーンビルディングが世界的な注目を集める背景には、地球温暖化など世界的な環境変動への危機感があります。

特に建築業界は資源消費量やCO2排出量などの割合が高いとされ、世界グリーンビルディング協会の調査によると世界の二酸化炭素排出量の約30%が建物から排出され、飲料水消費量の14%が建物によって消費されているとのことです。

こうした事実を受けて、国際社会や各国の建設業界も動き始めています。

たとえば2015年の気候変動枠組条約パリ会議(COP21)では「GABC(Global Alliance for Buildings and Construction)」と呼ばれる建築・建設業界のアライアンスが結成され、23か国の64団体(現在は24か国・72団体)がグリーンビルディングの推進を確認しました。

また後ほど説明しますが、アメリカのグリーンビルディング認証制度「LEED」をはじめ、さまざまな認証制度も各国で誕生し、運営されています。

市場規模

市場規模が急速に拡大していることもグリーンビルディングの特徴のひとつです。Research and MarketsやResearch Nesterといった調査会社のレポートによると、世界のグリーンビルディング市場の年平均成長率は2015年から2020年にかけて約13%、新型コロナの影響で景気が減速した2022年以降(〜2030年)も10%と見込まれています。

グリーンビルディング建材の市場規模も2015年から2022年にかけて倍増(171億米ドル→333億米ドル)しており、特にアジア太平洋地域、次いでヨーロッパ市場での成長が顕著です。

グリーンビルディング認証制度

世界的な市場拡大を後押ししているのが「認証制度」です。グリーンビルディング認証は各国ごとにさまざまな制度が運用されており、現在のところ世界的な統一基準はありません。

しかしどの国においても認証取得には専門家による多くの審査が必要で、それぞれ一定以上の水準を満たすことが要求されます。

このため建設事業者が自国(もしくは主要な市場のある国)で認証を取得していれば、国際的にもある程度の評価を期待できるでしょう。

世界の認証制度

グリーンビルディング認証で最も有名なのは、アメリカの「LEED」です。USGBC(米国グリーンビルディング協議会)によるこの認証は、アメリカだけでなく日本を含む世界各国において共通の基準で運営されており、高い信頼と評価を得ています。

他にも中国の「GBAS(緑色評価評文体系)」フランスの「HQE」イギリスの「BREEAM」オーストラリアの「Nabers」シンガポールの「Green Mark」などが有名です。

日本の認証制度

日本国内には、独自のものを含めさまざまなグリーンビルディング認証制度が存在します。現時点で国内運用されている主な認証制度やツールは次の通りです。

  • CCASBEE建築評価認証
  • CASBEE戸建評価認証
  • CASBEE不動産評価認証
  • CASBEE街区評価認証
  • CASBEEウェルネスオフィス評価認証
  • DBJ Green Building認証
  • WELL Building Standard
  • GRESB
  • まちなかの居心地の良さを測る指標(案)
  • LEED BD+C ─ Building Design and Construction / 建築設計および建設
  • LEED ID+C ─ Interior Design and Construction / インテリア設計および建設
  • LEED O+M ─ Building Operations and Maintenance / 既存ビルの運用とメンテナンス
  • LEED ND ─ Neighborhood Development / 近隣開発
  • LEED HOMES ─ Homes / ホーム
  • LEED Cities and Communities / シティー & コミュニティ

(参考:国土交通省ホームページ『不動産関連評価制度等について』)

これらのうち、5つの分野で建物や都市に関わる環境性能を評価するCASBEEは日本国内の建築事業者、設計事務所、建物所有者、不動産投資会社などに広く利用され、24の地方公共団体では届出制度としても導入され(2021年10月時点)ています。届出数の累計は2020年3月末の時点で2万8000件以上です。CASBEEを活用した公的な助成制度や低利融資制度も実施されており、今後もCASBEE認証の活用はますます進んでいくことでしょう。

アメリカ発祥のグリーンビルディング認証「LEED」の活用も進んでいます。一般社団法人グリーンビルディングジャパン(GBJ)によると2022年2月現在で197のプロジェクトがLEED認証を受けており、その数は毎年右肩上がりで成長中です。

建設業者にとってのメリット

グリーンビルディングの取り組みやグリーンビルディング認証の取得は、建設事業者にとってさまざまなビジネス上のメリットがあります。

市場の拡大

すでに説明した通り、グリーンビルディングの市場は世界中で高い成長率を維持しており、特にアジア太平洋地域でその傾向が顕著です。日本の建設事業者にとって、グリーンビルディングは国内はもちろん海外に進出するうえでも大きな強みとなるでしょう。

雇用の創出

グリーンビルディングの雇用創出効果にも注目が集まっています。アメリカでは2018年までに110万件の雇用と756億ドルの賃金を生み出しました。世界全体では、2030年までに再生可能エネルギーと建設の分野で 900万件以上の技術職の雇用を創出するとも言われています。

企業イメージの向上

環境への配慮は、企業の倫理観やイメージアップに欠かせません。グリーンビルディング認証を取得することが企業イメージのアップにつながり、結果として事業規模の拡大につながると期待できます。これは『注目度が高まる「グリーンインフラ」とは?建設業界との関係や具体的な取り組みを紹介!』で紹介したグリーンインフラとも共通するメリットです。

現代の国際社会のニーズや関心を考えると、グリーンビルディングもグリーンインフラも建設事業者にとって大きなビジネスチャンスといえるでしょう。

グリーンビルディングの事例

すでに世界中で多くの建設事業者がグリーンビルディングに取り組んでいます。最後に有名な取り組み事例をいくつか紹介していきます。

世界の事例

グリーンビルディングにいち早く取り組んできたのがアメリカです。アメリカ国内にはいくつもの先進事例がありますが、中でも有名なのはマンハッタンのバッテリーパーク地域にある「ソレイア」でしょう。

ソレイアはニューヨークで最初にLEED認証を受けたビルで、大型住居ビルとしては全米で初めてLEED認証を受けました。注目ポイントは「雨水やビル内の排水を利用した省水設計」や「ソーラーシステム完備による自家発電機能」「農薬未使用、省水設計の散水システムを使用したルーフトップガーデン」などです。

バッテリーパーク地域にはすでに同様のビルがいくつも建設され、他の同クラスのビルより割高な賃料にもかかわらず入所希望者が絶えないといいます。

日本企業の事例

日本で注目される事例は、前田建設工業が建設した「ICIラボ エクスチェンジ棟」です。「建設地の恵まれた自然環境と高効率機器を最大限に活用」し、国内トップレベルの省エネ性能を誇るオフィスビルは日本で初めてLEEDのプラチナ認定を受けました。

他にも「イオンモール幕張新都心」「京都大学・国際科学イノベーション棟」「二子玉ライズ・タワーオフィス」などもLEEDのゴールド認証を受けており、今後さらに多くの建設事業者がグリーンビルディング認証の取得に力を入れていくことが期待されています。

まとめ

グリーンビルディングは、建設事業者にとって事業拡大や雇用の創出、企業イメージのアップにつながります。すでに認証制度を届出義務としている自治体もあり、今後もこうした動きはますます増えていくことでしょう。自社のビジネスチャンスを広げるためにも、ぜひグリーンビルディングの取り組みに挑戦してみてください。

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