建設業を営む事業者は、原則として建設業許可の取得が必要です。とはいえ一口に「建設業許可」と言ってもさまざまな種類があるため、事業者は自分たちが施工する工事に合った許可を取得しなければなりません。
この記事では全29種類の建設業許可について解説していきます。
建設業許可の仕組みについて
まずは建設業許可の基本的な仕組みについて説明していきましょう。
建設業許可には大きく分けて「大臣許可と知事許可」「一般建設業と特定建設業」「一式工事と専門工事」という3つの区分があり、事業者の組織形態や工事の規模・内容によって、それぞれの区分が組み合わされます。
大臣許可と知事許可
大臣許可と知事許可は、建設事業者の「営業所の所在地」に応じた区分です。いくつもの都道府県にまたがって複数の営業所を展開している場合は大臣許可、営業所がひとつだったり、もしくは複数の営業所がひとつの都道府県に収まっている場合は知事許可、という具合です。
| 許可の種類 | 要件 | 許可行政庁 |
|---|---|---|
| 大臣許可 | 建設工事に関わる営業所（本店や支店など）が複数あって、それらが複数の都道府県に所在している場合 | 北海道開発局地方整備局沖縄総合事務局 |
| 知事許可 | 建設工事に関わる営業所がひとつしかないか、複数あってもすべて単一の都道府県に所在している場合 | 都道府県知事 |
一般建設業と特定建設業
一般建設業と特定建設業は、建設事業者が「一定金額以上の下請契約を結ぶかどうか」に応じた区分です。具体的には、1件あたり4,000万円以上の下請契約を結ぶ事業者なら特定建設業、それ以外の事業者は一般建設業を取得します。
| 許可の種類 | 要件 |
|---|---|
| 一般建設業 | 下記以外の建設事業者 |
| 特定建設業 | 発注者から直接請け負う工事1件につき、4,000万円（建築工事業の場合は6,000万円）以上の「下請契約」を結ぶ建設事業者 |
関連記事：特定建設業とはどのような業種？一般建設業との違いと許可要件について解説
一式工事と専門工事（業種区分）
一式工事と専門工事は、建設事業者が行う「工事の種類・内容」に応じた区分です（業種区分ともいいます）。
大工工事や左官工事、電気工事など特定の工事のみを担当する業者が取得するのが専門工事で、それら専門工事を行う複数の下請業者を束ねて、大規模かつ複雑な工事を施工する元請業者が取得するのが一式工事です。
ちなみに一式工事には「土木一式工事」と「建築一式工事」の2種類、専門工事には「大工工事」「左官工事」などを始めとする27種類があります（それぞれの詳しい内容は後ほど説明します）。
業種区分は複数取得することも
建設業者によっては、29種類の業種区分のうち複数の業種で許可を取得するケースもあります。たとえば塗装工事と内装工事のどちらも請け負うのであれば、「塗装工事」の建設業許可と「内装仕上工事」の建設業許可の両方が必要です。
ちなみに工事の規模が小さい場合は、例外的に建設業許可が不要とされることもあります。詳しくは『500万円未満の工事は建設業許可が不要？「軽微な建設工事」の判断基準と注意点について解説 』をお読みください。
建設業許可の29種類を全解説
建設業許可の業種区分について、一つずつ具体的に解説していきます。
①土木一式工事
総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事（補修、改造、解体工事を含みます）
②建築一式工事
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事（補修、改造、解体工事を含みます）
③大工工事
木材の加工や取付けにより工作物を築造したり、工作物に木製設備を取付ける工事
| 例：大工工事、型枠工事、造作工事など |
④左官工事
工作物に、壁土・モルタル・漆くい・プラスター・繊維等をこて塗り、吹付け、はり付ける工事
| 例：左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事など |
⑤とび・土工工事
イ）足場の組立てや、機械器具・建設資材などの重量物をクレーンで運搬配置したり、鉄骨等の組立てを行う工事
| 例：とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事など |
ロ）くい打ち、くい抜き、場所打ぐいを行う工事
| 例：くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事など |
ハ）土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
| 例：土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事など |
ニ）コンクリートにより工作物を築造する工事
| 例：コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事など |
ホ） その他基礎的ないしは準備的工事
| 例：地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事など |
⑥石工事
石材の加工や積方により工作物を築造したり、工作物に石材を取付ける工事
| 例：石積み（張り）工事、コンクリートブロック積み（張り）工事など |
⑦屋根工事
瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事
⑧電気工事
電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事
| 例：発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備（非常用電気設備を含む）工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事など |
⑨管工事
冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置したり、金属管などを使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事
| 例：冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事など |
⑩タイル、れんが、ブロック工事
れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造したり、工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け・はり付ける工事
| 例：コンクリートブロック積み（張り）工事、レンガ積み（張り）工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事など |
⑪鋼構造物工事
形鋼、鋼板等の鋼材の加工や組立てにより工作物を築造する工事
| 例：鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事など |
⑫鉄筋工事
棒鋼等の鋼材を加工・接合・組立てる工事
| 例：鉄筋加工組立て工事、鉄筋継手工事など |
⑬舗装工事
道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事
| 例：アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事など |
⑭しゅんせつ工事
河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事
⑮板金工事
金属薄板等を加工して工作物に取付けたり、工作物に金属製等の付属物を取付ける工事
| 例：板金加工取付け工事、建築板金工事など |
⑯ガラス工事
作物にガラスを加工して取付ける工事
| 例：ガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事など |
⑰塗装工事
塗料、塗材等を工作物に吹付け・塗付け・はり付ける工事
| 例：塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事など |
⑱防水工事
アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事
| 例：アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事など |
⑲内装仕上工事
木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事
| 例：インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事など |
⑳機械器具設置工事
機械器具の組立て等により工作物を建設したり、工作物に機械器具を取付ける工事
| 例：プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事など |
㉑熱絶縁工事
工作物や工作物の設備を熱絶縁する工事
| 例：冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事など |
㉒電気通信工事
有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事
| 例：有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事など |
㉓造園工事
整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造したり、道路、建築物の屋上等の緑化や植生を復元する工事
| 例：植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事など |
㉔さく井工事
さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事や、これらに伴う揚水設備設置等を行う工事
| 例：さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事など |
㉕建具工事
工作物に木製や金属製の建具等を取付ける工事
| 例：金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事など |
㉖水道施設工事
上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事や、公共下水道・流域下水道の処理設備を設置する工事
| 例：取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事など |
㉗消防施設工事
火災警報設備、消火設備、避難設備、消火活動に必要な設備を設置したり、それらの設備を工作物に取付ける工事
| 例：屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事など |
㉘清掃施設工事
し尿処理施設やごみ処理施設を設置する工事
㉙解体工事
工作物の解体を行う工事
まとめ
建設業許可の29種類の中には、互いに関連が深い（一緒に施工することが多い）工事もたくさんあります。自社の施工内容や工事の規模をよく検討したうえで、必要な許可を取得するようにしましょう。
