公共工事などに利用できる新技術の活用を促進するため、国土交通省が運用しているデータベースが「NETIS(新技術情報提供システム)」です。この記事ではNETISの概要やメリット、活用方法などについてわかりやすく解説していきます。
NETISとは、国土交通省が運用するデータベースの名前です。New Technology Information System(新技術情報提供システム)の頭文字(先頭のNewだけNE)を取って、NETIS(ネティス)と呼ばれています。
新技術情報提供システムという名前の通り、NETISが扱うのは「新技術」です。具体的には公共工事などに活用できる新技術で、具体的にはドローンやクラウド、VR(バーチャルリアリティ)関連の製品などが登録されています。
NETISの検索・参照に特別な条件は必要ありません。インターネットさえあれば、基本的にだれでも利用できます。
NETISの目的は、データベースを通して新技術の活用を促進することです。新技術が登録されれば「その技術を必要とする人」の目に留まりやすくなりますし、新技術の評価情報を共有することで、技術を活用するためのハードルが低くなる(リスクが軽減される)ことにもつながります。
また技術が活用されることで、技術がさらに進歩することも目的のひとつです。
NETISが整備された背景には、建設業界が抱えるさまざまな課題があります。なかでも深刻なのは、建設作業に携わる技術者の減少とインフラの老朽化です。
世界でもトップクラスに高齢化が進む日本では、団塊の世代(1947年から1949年に生まれた世代)の現役引退が本格化しています。2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者となり、現役世代が少なくなるのです(これを「2025年問題」と呼びます)。加えて、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の職場とされる建設業界は若手の新規就業者が他業種よりも少なく、人材不足に輪をかけています。
インフラについては、高度成長期以降に作られた道路や橋、トンネル、下水道などの多くが耐用年数の限界を迎えており、建て替えや大規模補修のニーズが急増中です。これらのニーズに応えるには、建設業界の効率化や新技術の導入が不可欠です。
建設業界や社会のニーズを背景に生まれたNETISですが、その活用によるメリットをもう少し詳しく見ていきましょう。
NETISを活用するには、まずは新技術の情報を登録する必要があります。技術の登録者(開発者)にとって、NETISのメリットは以下の通りです。
他にもNETISに登録され評価を受けることで自社の信頼性がアップすることや、自社の新技術に「活用推進技術」という名称を使えるようになることもメリットといえるでしょう。
もちろん、NETISを通して新技術の情報をキャッチする側(利用側)にも大きなメリットがあります。こちらのメリットとして挙げられるのは、主に以下の通りです。
前者の加点について、実際の点数は条件に応じて1〜3点の範囲で変わります。配点の基準は大きく分けて「新技術が事後評価を受けているか」と「活用したことによる効果(の評価)」です。なお事後評価については後ほど説明します。
事後評価 | 活用による効果※1 | 配点 |
未実施(事後評価未実施技術) | 相当程度 | 3 |
一定程度 | 2 | |
従来技術と同程度 | 1 | |
実施済(事後評価実施済技術) | 相当程度 | 2(+1)※2 |
一定程度 | 1(+1)※2 | |
従来技術と同程度 | 0(+1)※2 |
※1 それぞれの基準は以下の通り
※2「有用な新技術」を利用した場合は+1点
ここからは、実際にNETISを利用する方法を紹介していきます。まずは新技術を保有する企業がNETISに情報を登録する手順から確認していきましょう。
NETISの公式サイト「NETIS登録」の流れについてから、登録に関する情報を集めます。公式サイトのページからは、登録操作に必要なマニュアルのほか、申請に必要な様式を入手できます。
必要な書類や申請の手順を確認したら、申請書類を作成します。公式サイトには「チェックリスト」も用意されているので、それを利用して不備がないよう準備します。
準備した申請書類を提出します。提出先は各地域の「技術事務所」(たとえば関東技術事務所)や、港湾空港技術調査事務所、北海道開発局事業振興部技術管理課などです。提出の際は窓口に書類を持ち込みます(ヒアリングあり)。
提出された書類は事務所でチェックします。まずは書類がすべて揃っているかどうか、そして内容に不備がないかどうかを確認し、不備があれば修正を行います。なお確認や修正に必要な時間は3か月〜半年程度です。
書類がすべて揃っていて、不備がない(もしくは不備が修正された)ことが確認されたら、新技術がデータベースに「登録」されます。
上記の手順で登録された新技術は、まず「申請情報」に分類されます。申請情報としてデータベースに掲載される内容は、技術的事項や経済性に関する情報など、技術の開発者が登録申請書類に記載した情報です。
新情報が直轄工事などで5件以上で活用され、発注者と施工者による「活用効果調査表」が提出されると、その技術は「事後評価」の対象となります。事後評価は「新技術活用評価会議」によって行われ、評価を受けた新技術とその結果は「評価情報」に分類されます。
新技術の掲載には「期間」があります。申請情報に分類される(事後評価を受けていない)技術は登録された翌年の4月1日から5年間、評価情報に分類される(事後評価を受けた)技術は登録された翌年の4月1日から10年間です。
次に、新技術を使いたい企業がNETISを利用する手順について説明します。
新技術を探したい場合は、まずNETISのサイトにアクセスします。『初めてアクセスされた方へ』にアクセスすると、以下のように表示されます。
職種についての簡単なアンケートに答えて「OK」をクリックすると、情報検索画面に移動します。
情報検索画面ではキーワード入力、もしくは工種や「期待する効果」などで新技術を検索できます。公共工事の入札を有利に進めたい企業は「有用な新技術」を絞り込んで検索することも可能です。
検索結果は以下のように表示されます。技術概要や写真、登録年度、活用件数や評価の有無などを一覧で確認できます。
一覧に表示されている新技術を選択(技術の名称部分をクリック)すると、詳細情報が表示されます。
詳細を確認したら「問合せ先・その他」から新技術を保有する企業(登録者)の連絡先を確認して、コンタクトを取ります。
NETISに登録されている新技術には固有の番号が与えられています(上の例では「KK-200034-VE」)。この文字列の中で特に重要なのは最後のアルファベットです。アルファベットは計6種類あり、それぞれ以下のような意味が与えられています。
A:評価情報が掲載されていない技術
V:評価情報が掲載されている技術(現在は使われていない)
VR:評価情報が掲載されており、かつ継続調査の対象となった技術
VE:評価情報が掲載されており、かつ継続調査の対象としない技術
AG:評価情報が掲載されていなかった掲載期間終了技術
VG:評価情報が掲載されていた掲載期間終了技術
末尾がAの新技術は、登録からあまり時間が経っていないものがほとんどです。5件以上活用され、事後評価の対象となった技術はVRかBEのいずれかに分類されます。
NETISは新しい技術を開発した企業にとっても、新技術を活用したい企業にとっても大きなメリットとなるシステムです。これまでNETISについて知らなかった、あるいは知ってはいても活用していなかったという方は、ぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか?
また、公共工事の情報収集には、ぜひ「入札ネット+α」をご活用ください。入札ネット+αは、建設専門新聞社が運営する関東甲信越内の公共工事が検索できる入札情報サービスです。まずは無料でお試しできますので、ぜひお気軽にお申し込みください。