建設プロジェクトには多くの要素が関わってきますが、その中でも特に重要なのが「共通仮設費」です。本記事では共通仮設費とはなにか、その内訳や計算方法についてわかりやすく解説します。プロジェクトの予算管理を効果的に行い、無駄のない建設計画を立てるための参考にしてください。
共通仮設費とは、工事施工そのものに直接関係しないが、工事全体を行うに当たって必要となる費用のことです。現場事務所などの仮設建物や工事用電力給排水設備などの設置にかかる費用がこれに該当します。
具体的には、以下のようなものが共通仮設費に含まれます。
共通仮設費の金額は工事の規模や種類によって異なりますが、全体のコスト管理において重要な位置を占めるものです。
共通仮設費に似た言葉として、共通費があります。共通費は工事全体を進めるにあたって間接的に必要となる費用の総称で、共通仮設費、現場管理費、一般管理費の3つの費用から構成されます。つまり、本記事のテーマである共通仮設費は、共通費の一部に含まれます。
共通費 | 共通仮設費 |
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工事全体を進めるために必要となる費用の総称 | 工事現場で必要な仮設物の設置・撤去などにかかる費用 |
共通仮設費、現場管理費、一般管理費 | 準備費、仮設建物費、工事施設費、環境安全費、動力用水光熱費、屋外整理清掃費、機械器具費、その他 |
共通費は会社の経営やプロジェクト管理全体に関わる費用であり、一般的には会社の全プロジェクトにわたって均等に割り当てられます。一方、共通仮設費は特定の建設プロジェクト固有のもので、そのプロジェクトの特性や規模に基づいて計算されます。
直接仮設費とは、工事施工そのものに直接必要となる足場や養生などの仮設物を設置するための費用です。共通仮設費と直接仮設費の違いは、工事施工そのものに直接関係するかどうかです。
共通仮設費は、上記のとおり工事施工に間接的に必要な費用である共通費に含まれるのに対し、直接仮設費は工事施工そのものに直接関係する費用であることから直接工事費に含まれます。
共通仮設費は、建設工事において不可欠な多くの要素から構成されます。これらの費用はいずれも、プロジェクトの効率性と安全性を確保するために重要なものです。
準備費は、工事開始前の現場準備に関連する費用です。具体的には、以下のようなものが含まれます。
仮設建物費は、工事現場に設置される仮設建物(事務所、倉庫、作業員の更衣室など)に関わる費用です。具体的には、以下のようなものが含まれます。
工事施設費は、工事現場に設置する特定の施設に関する費用です。具体的には、以下のようなものが含まれます。
環境安全費は、現場の環境保護と作業員の安全確保に関連する費用です。具体的には、以下のようなものが含まれます。
動力用水光熱費は、工事現場での電力、水道、照明などのエネルギー利用に関わる費用です。具体的には、以下のようなものが含まれます。
屋外整理清掃費は、現場の整理整頓と清掃にかかる費用です。具体的には、以下のものが含まれます。
機械器具費は、工事で使用される各種機械や器具の購入、レンタル、維持管理に関する費用です。具体的には、以下のようなものが含まれます。
共通仮設費には、上記に含まれない費用もあります。具体的には、以下のようなものです。
これらの費用も適切に計算し、予算管理に含める必要があります。
共通仮設費の計算には、一般的に「共通仮設費率(Kr)」という指標を用います。
Kr=Exp(a + b × Loge P + c × LogeT) ※1 Exp()=指数関数e()。e=ネイピア数(自然対数の底) ※2 a,b,c=各工種等の個別の定数 ※3 P=直接工事費(千円)、T=工期(か月) ※4 Krの値は小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする ※5 昇降機設備の算定方法は別の計算式による |
国土交通省「共通仮設費率及び現場管理費率の算定式について」より引用
なお共通仮設費率は、工事の種類や規模(直接工事費の金額)によって上限・下限が定められています。以下に、種類ごとの共通仮設費率の計算式を紹介します。
新営建築工事の共通仮設費率は【Kr = Exp(3.346 – 0.282 × loge P + 0.625 × loge T)】です(直接工事費Pが1,000万円〜50億円の範囲を外れる場合は共通仮設費を別途定めることができる)が。
改修建築工事の共通仮設費率は【Kr = Exp(3.962 – 0.315 × loge P + 0.531 × loge T)】です(直接工事費Pが300万円〜10億円の範囲を外れる場合は共通仮設費を別途定めることができる)。
新営電気設備工事の共通仮設費率は【Kr = Exp(3.086 – 0.283 × loge P + 0.673 × loge T)】です(直接工事費Pが1,000万円〜10億円の範囲を外れる場合は共通仮設費を別途定めることができる)。
改修電気設備工事の共通仮設費率は【Kr = Exp(1.751 – 0.119 × loge P + 0.393 × loge T)】です(直接工事費Pが300万円〜10億円の範囲を外れる場合は共通仮設費を別途定めることができる)。
新営機械設備工事の共通仮設費率は【Kr = Exp(2.173 – 0.178 × loge P + 0.481 × loge T)】です(直接工事費Pが1,000万円〜10億円の範囲を外れる場合は共通仮設費を別途定めることができる)。
改修機械設備工事の共通仮設費率は【Kr = Exp(2.478 – 0.173 × loge P + 0.383 × loge T)】です(直接工事費Pが300万円〜10億円の範囲を外れる場合は共通仮設費を別途定めることができる)。
昇降機設備工事の共通仮設費率は【Kr = Exp(4.577 – 0.323 × loge P)】です。(直接工事費Pが500万円〜5億円の範囲を外れる場合は共通仮設費を別途定めることができる)。
共通仮設費の適切な計算と管理は、建設プロジェクトの成功にとって不可欠です。各種工事における共通仮設費率の理解は、効率的かつ経済的なプロジェクト運営に役立ちます。この記事を通して共通仮設費の計算と管理についての知識を深め、これからの事業経営に役立てていただければ幸いです。