入札公告とは何か?活用方法は?入札情報の集め方ををわかりやすく解説

入札に参加するには、まず最初に「入札公告」の確認が必要です。このため入札公告の仕組みをきちんと理解しておくことは、自社に合った入札案件を見つけ、必要な要件を揃えるための第一歩となります。

今回は「入札公告」について定めた法令や一般的な入札参加手順を中心に、入札公告の活用方法と入札情報の集め方についてわかりやすく解説します。

「入札公告」とは

入札公告とは、官公庁などの機関が入札の発注情報を公開することです。入札情報の公告義務については「予算決算及び会計令(予決令)」という法令に書かれています。

予算決算及び会計令 第74条
契約担当官等は、入札の方法により一般競争に付そうとするときは、その入札期日の前日から起算して少なくとも10日前に官報、新聞紙、掲示その他の方法により公告しなければならない。ただし、急を要する場合においては、その期間を5日までに短縮することができる。

予算決算及び会計令 第75条
前条の規定による公告は、次に掲げる事項についてするものとする。1 競争入札に付する事項2 競争に参加する者に必要な資格に関する事項3 契約条項を示す場所4 競争執行の場所及び日時5 会計法第29条の4第1項の保証金(以下「入札保証金」という。)に関する事項

それぞれの条文の内容について説明していきます。

「入札公告」はどこで見れるの?

予決令第74条によると、入札は「官報、新聞紙、掲示その他の方法」で公告することになっています。ただしこれらはあくまで例示です。大勢の人の目に触れることができるなら、原則として公告の場所は限定されません。最近は「WEBサイト」に掲載されるのが一般的です。

なお、「官報」に掲載される入札案件の多くは高額な政府調達契約です。また比較的低額の入札案件の場合、官公庁の掲示板に掲示したり窓口で配布されることもあります。ちなみに記載料金の高い新聞広告は、非常に重要な契約以外ではほとんど利用されません。

入札公告にはどんなことが書かれているの?

予決令第75条によると、入札公告に記載される内容は5項目です。

①競争入札に付する事項

入札の内容を簡潔に示す「件名」、つまり入札公告のタイトルです。

入札に参加する企業の担当者は、まず件名を見て案件の内容をイメージします。また発注機関の担当者も、膨大な量の見積書を件名によって整理します。ですから件名は「入札案件の内容がひと目でわかるもの」でなくてはなりません。

たとえば、過去に募集された入札公告の件名には次のようなものがあります。

公共工事契約(国土交通省)
横浜港新本牧地区護岸(防波)南側海上地盤改良工事

コンサルタント業務契約(財務省)
財務省行政情報化LANシステム再構築に係る工程管理支援等に関するコンサルティング業務 一式

物品購入契約(厚生労働省)
「請求(申請)のできる保険給付等」パンフレット25,910部 ほか36件の印刷

具体的な数量が指定されている入札案件の場合、原則として件名の中で数量が記載されます(上記の例では「パンフレット25,910部」)。ただし内訳の数が多い場合などは「一式」と記載して、別に添付する仕様書で細かい内容が指定されます。

なお混乱を避けるため、同じような内容の入札案件が複数回募集される場合でも「同じ年度」に「同じ件名」が使われることはありません。

②競争に参加する者に必要な資格に関する事項

ここでは予決令の第70条・第71条・第73条の内容に沿って、入札に参加できる(参加できない)資格が記載されます。

予算決算及び会計令 第70条(一般競争に参加させることができない者)
契約担当官等は、売買、貸借、請負その他の契約につき会計法第29条の3第1項の競争(以下「一般競争」という。)に付するときは、特別の理由がある場合を除くほか、次の各号のいずれかに該当する者を参加させることができない。

1 当該契約を締結する能力を有しない者
2 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
3 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第32条第1項各号に掲げる者

予算決算及び会計令 第71条(一般競争に参加させないことができる者)
契約担当官等は、一般競争に参加しようとする者が次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、その者について三年以内の期間を定めて一般競争に参加させないことができる。その者を代理人、支配人その他の使用人として使用する者についても、また同様とする。

1 契約の履行に当たり故意に工事、製造その他の役務を粗雑に行い、又は物件の品質若しくは数量に関して不正の行為をしたとき。
2 公正な競争の執行を妨げたとき又は公正な価格を害し若しくは不正の利益を得るために連合したとき。
3 落札者が契約を結ぶこと又は契約者が契約を履行することを妨げたとき。
4 監督又は検査の実施に当たり職員の職務の執行を妨げたとき。
5 正当な理由がなくて契約を履行しなかつたとき。
6 契約により、契約の後に代価の額を確定する場合において、当該代価の請求を故意に虚偽の事実に基づき過大な額で行つたとき。
7 この項(この号を除く。)の規定により一般競争に参加できないこととされている者を契約の締結又は契約の履行に当たり、代理人、支配人その他の使用人として使用したとき。

予算決算及び会計令 第73条(契約担当官等が定める一般競争参加者の資格)
契約担当官等は、一般競争に付そうとする場合において、契約の性質又は目的により、当該競争を適正かつ合理的に行なうため特に必要があると認めるときは、各省各庁の長の定めるところにより、前条第一項の資格を有する者につき、さらに当該競争に参加する者に必要な資格を定め、その資格を有する者により当該競争を行なわせることができる。

上記のうち、予決令第70条に該当する者は入札に参加できません。一方で第71条と第73条に該当する者は、入札資格を限定する必要がある場合のみ入札公告に記載されます。

③契約条項を示す場所

入札案件の内容を記載した「書類の配布場所」や「連絡先」「説明会場所」「日時」などが記載されます。以下に引用するのは実際の入札公告の一部です。

4 入札手続等
(1)担当部局
〒330-9724 埼玉県さいたま市中央区新都心2-1 さいたま新都心合同庁舎2号館17階 関東地方整備局総務部契約課 工事契約調整係
電話 048-601-3151(代)
内線2525
Mail:ktr-denshi-baitai@mlit.go.jp


(2)入札説明書の交付期間、場所及び方法
入札説明書を電子入札システムにより交付する。
交付期間は令和2年3月30日から令和2年6月30日までの土曜日、日曜日及び祝日等(行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)第1条第1項に規定する行政機関の休日(以下「休日」という。))を除く毎日、9時00分から17時00分まで。
ただし最終日は、9時00分から12時00分までとする。ただし、やむを得ない事由により、上記交付方法による入手ができない入札参加希望者に対しては、電子メールにより電子データを交付するので、上記(1)に電子メールにて依頼を行うこと。
受付期間は、令和2年3月30日から令和2年6月30日までの休日を除く毎日、9時15分から18時00分まで。ただし最終日は、9時15分から12時00分までとする。

(国土交通省関東地方整備局の入札公告『R2国道246号渋谷駅周辺地下道工事』より)

電話番号やメールアドレス、説明会の場所・日時は特に重要な情報なので、間違えないよう注意が必要です。なお書類配布のみ行う入札案件では、説明会について記載しないケースもあります。

④競争執行の場所及び日時

一連の入札手続が行われる「場所」と「日時」です。具体例として、上記③で引用した入札案件の続きを掲載します。

(3)申請書及び資料の提出期間、場所及び方法
令和2年3月30日から令和2年4月24日までの休日を除く毎日、9時00分から17時00分まで電子入札システムにより提出を行うこと。
ただし、 発注者の承諾を得た場合は、令和2年3月30日から令和2年4月24日までの休日を除く毎日、9時15分から18時00分までに上記4(1)へ持参すること。


(4)歩掛見積参考資料の交付期間、場所及び方法
競争参加資格を有する者に対しては、歩掛見積参考資料を電子入札システムにより交付する。
交付期間は令和2年5月22日から令和2年6月30日までの休日を除く毎日、9時00分から17時 00分まで。ただし最終日は、9時00分から12時00分までとする。
ただし、やむを得ない事由により、上記交付方法による入手ができない競争参加資格を 有する者に対しては、電子メールより電子デー タを交付するので、上記(1)に電子メールにて依頼を行うこと。
交付期間は、令和2年5月22日から令和2年6月30日までの休日を除く毎日、9時15分か ら18時00分まで。ただし、最終日は、9時15分から12時00分までとする。


(5)入札保証金の納付等に係る書類の提出期間、場所及び方法
令和2年5月25日から令和2年6月30日まで
〒330-9724 埼玉県さいたま市中央区新都心2 -1 さいたま新都心合同庁舎2号館17階 関東地方整備局総務部契約課
電話048-601-31 51(代)
郵送 (書留郵便に限る。提出期間内必着。)又は託送(書留郵便等、記録の残るものに限る。提出期間内必着。)により提出すること。


(6)入札及び開札の日時及び場所並びに入札書の提出方法
入札書は、電子入札システムにより提出すること。
ただし、発注者の承諾を得た場合は紙により持参又は郵送もしくは託送(書留郵便等、記録の残るものに限る。)すること。
1 電子入札システムによる入札の締め切りは、令和2年6月30日12時00分。
2 持参による入札の受領期限は、令和2年6月30日12時00分 関東地方整備局総務部契約課にて入札すること。
3 郵送等による入札の受領期限は、令和2年6月30日12時00分送付先は、関東地方整備局総務部契約課契約第一係。
開札は、令和2年7月3日10時00分 関東地方整備局総務部契約課にて行う。
なお、落札決定の日は開札の翌日(休日は除く。)を予定する。

(国土交通省関東地方整備局の入札公告『R2国道246号渋谷駅周辺地下道工事』より)

場所や日時を間違えると入札に参加できません。非常に重要な情報となるため、注意が必要です。

⑤入札保証金に関する事項

入札補償金とは、落札者が確実に契約するよう(もしくは、落札者が契約しなかった場合の被害を抑えるため)、入札時に納めさせるお金です。

(2)入札保証金及び契約保証金
1 入札保証金納付(保管金の取扱店 日本銀行埼玉新都心代理店(埼玉りそな銀行さいたま新都心支店))。
ただし、利付国債の提供(取扱官庁 関東地方整備局)又は銀行等の保証(取扱官庁 関東地方整備局)をもって入札保証金の納付に代えることができる。
また、入札保証保険契約の締結を行い、又は契約保証の予約を受けた場合は、入札保証金を免除する。

2 契約保証金納付(保管金の取扱店 日本銀行埼玉新都心代理店(埼玉りそな銀行さいたま新都心支店))。
ただし、利付国債の提供(取扱官庁 関東地方整備局)又は金融機関若しくは保証事業会社の保証(取扱官庁 関東地方整備局)をもって契約保証金の納付に代えることができる。
また、公共工事履行保証証券による保証を付し、又は履行保証保険契約の締結を行った場合は、契約保証金を免除する。

(国土交通省関東地方整備局の入札公告『R2国道246号渋谷駅周辺地下道工事』より)

なお、全省庁統一資格など、一定の競争参加資格を持つ場合は入札保証金が免除されます(詳しくは『公共工事の入札に必要な「入札保証金」と「契約保証金」とは?』の記事をご覧ください)。

「入札公告期間」とは

入札公告期間というのは、入札公告をしてから実際の入札が行われるまでの期間です。予決令第74条をもう一度引用します。

予算決算及び会計令 第74条
契約担当官等は、入札の方法により一般競争に付そうとするときは、その入札期日の前日から起算して少なくとも10日前に官報、新聞紙、掲示その他の方法により公告しなければならない。ただし、急を要する場合においては、その期間を5日までに短縮することができる。

原則として、入札公告は入札期日の「前日から数えて10日前」までに行われます(実際には2〜3週間前)」。特に急ぎの案件では「前日から数えて5日前」に入札公告が行われる場合もあります。

入札に参加する際はさまざまな書類を揃えたり、必要な資格を取得しておくなどの準備が必要です。こうした準備をゼロから行おうとすると、たとえ2〜3週間でも時間が足りません。

入札に確実に参加するには、入札公告を見てから準備するのではなく、普段から入札情報を集めて入札公告に備えておくことが重要です。

落札の可能性を高める入札情報の集め方

入札情報の集め方にはコツがあります。特に、以下の4つのポイントに気を付けるようにしてください。

1. 発注者(国や地方公共団体)の予算案を見る

一つ目のポイントは「発注者の予算案」です。入札案件は年度ごとの予算に基づいて発注されます。このため1〜2月ごろに公開される予算案を見れば、「翌年度にどのような入札が行われるか」がおおむね予想できるのです。

ただし各省庁や自治体などの予算案は膨大な量に上るため、一つずつチェックして自社に合った入札案件を予想するのは効率的ではありません。

そこで利用したいのが、新聞社や調査会社が提供する資料です。たとえば日本工業経済新聞社が販売している「建設事業計画書」には、関東甲信越の9都県・市区町村、公社・企業団の「会計年度別の公共建設事業関連予算と事業個所、事業概要等」が掲載されています。こうした情報を上手に活用することで、入札情報の収集にかかる手間とコストを大幅に抑えられるでしょう。

2. 発注者の「発注見通し」をチェックする

二つ目のポイントは「発注見通し」です。「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」という法律によると、官公庁は「その年の公共工事」について事前に公表しなくてはなりません。

公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 第4条
各省各庁の長は、政令で定めるところにより、毎年度、当該年度の公共工事の発注の見通しに関する事項で政令で定めるものを公表しなければならない。

発注見通しは一般に、年度初めの4〜5月ごろ、各発注者のWEBサイトなどに掲載されます(一例として、東京都の「入札情報サービス」)。また、一部の発注見通しは、外部機関が運営するポータルサイト(一例として、一般財団法人日本建設情報総合センターの「入札情報サービス」)にも掲載されています。

発注見通しとして公開されるのは、入札の概要や公共工事の場所・期間、入札予定時期などです。あくまで「見通し」なので、掲載された入札案件が必ず発注されるとは限りません。それでも発注見通しは、事前準備をする上で無視できない貴重な情報と言えます。

3. 「入札公告」を見て、要件を確認する

三つ目のポイントは「入札公告」そのものです。入札公告として公開されるのは実際に発注される案件なので、内容・要件ともに一番精度の高い情報と言えるでしょう。

入札公告も、各発注者のWEBサイトや外部機関の入札情報ポータルサイトから確認できます。ただしWEBサイトは機関ごとに仕様が違うため、それぞれ別個に情報収集するのは効率的ではありません。

そこで利用したいのが、専門業者による入札情報サービスです。「入札ネット+α」は、統一されたフォーマットで約10,000機関の情報を検索できます。条件に合った入札公告をメール知らせてくれる機能もあるため、発注見通しと連携することで入札案件の「見逃し」も防げます。

4. 過去の落札実績や競合を分析し、自社の戦略を決める

4つ目のポイントは「過去の落札実績」です。これまでにどのような入札案件があったか、いくらで、どこが落札したかといった情報は、自社の入札戦略を立てる上で欠かせません。

各発注機関のWEBサイトにも過去の情報は掲載されていますが、ほとんどの場合は過去1年か、せいぜい数年程度しか辿れません。

ここでも役立つのが専門業者による入札情報サービスです。「入札ネット+α」では過去25年分の入札・落札情報を検索できるため、さまざまな分析が可能です。

まとめ

今回は、入札公告について詳しく説明しました。入札公告は発注者ごとのWEBサイトからも確認できますが、効率的に情報収集するには「入札ネット+α」のようなサービスが有効です。自社に合った入札案件を確実に落札するためにも、ぜひ利用してみてください。

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