環境問題に配慮した建築とは?注目のサステナブル建築についても解説します

建設業界は、人々が快適に生活できるようインフラの整備に取り組んでいます。しかし工事に伴う資材の採掘から製造、施工、運用、そして解体に至る過程で環境に負荷を与えているのも事実です。このため近年では、環境に配慮した建築、いわゆるサステナブル建築が特に注目されるようになりました。今回の記事では、建築と環境問題の関係やサステナブル建築について、わかりやすくまとめていきます。

建築と環境問題の関係

建築は社会の発展や快適な生活に欠かせません。その一方で、環境に与えている影響にも目を向ける必要があります。まずはその具体例を、順に見ていきましょう。

資材生産に伴う環境負荷

建築物に使用される木材、コンクリート、鋼材などの生産は大量のエネルギーを消費するうえ、ときに環境破壊の原因となります。たとえば木材の過剰な伐採は、一部の地域で深刻な森林破壊と生物多様性の損失を招いてきました。またセメントを生産する際に排出されるCO2は、世界で排出されるCO2の約8%を占めるともいわれています。

施工に伴う環境負荷

建設工事では、現場に資材を運ぶトラックや、現場で稼働する重機からCO2を含む排気ガスが発生します。騒音や振動、粉じんなども環境に負荷をかける原因のひとつです。さらに建設廃棄物が不適切に処理されることにより、土壌や水質の汚染を引き起こす可能性もあります。

運用に伴う環境負荷

建物の運用段階では、冷暖房や照明などのエネルギー消費が課題です。一般家庭やオフィスビル、商業施設などの「建築物」が消費するエネルギー量は日本全体の約3割に相当するとされ、エネルギー消費性能の向上(CO2排出削減)に向けた取り組みが急務となっています。

解体に伴う環境負荷

建物の解体時には大量の建設廃棄物が発生します。これらの廃棄物が不適切に処理されると土壌汚染や水質汚染の原因となりますし、焼却時に発生するCO2も環境に影響を与える要因です。

サステナブル建築とは

サステナブル建築とは、環境への負荷を最小限に抑えながら、人々が健康で快適に過ごせる空間を提供する建築のことです。この目的を達成するために、エネルギー効率の高い設計、再生可能エネルギーの利用、環境に優しい材料の選択など、多岐にわたる取り組みが行われています。

ここでは地球レベル、地域レベル、室内レベルでの環境対策について紹介していきます。

地球レベルの環境対策

日本は2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)を国際公約に掲げています。具体的な取り組みは多岐に渡りますが、そのひとつが2015年に制定された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」の改正です。たとえば2025年に施行される改正法では、原則として「すべての新築住宅・非住宅」に省エネ基準適合が義務付けられます。

太陽光発電など「再生可能エネルギー」の積極的な活用も重要な取り組みです。たとえば東京都では、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」の改正により、新築建物への再生可能エネルギー利用設備や電気自動車充電設備の設置が義務付けられることになっています(2025年度より施行)。

参考:建築物環境計画書制度の改正概要について

民間の取り組みとして挙げられるのは、一般社団法人日本建設業連合会の「建設業の環境自主行動計画」です。このなかでは「環境配慮設計の促進」や「施工や設計・運用段階の温暖化対策」「建設副産物対策」「生物多様性と持続可能性」などについて、業界としての取り組みが検討されています。

また国際社会と足並みを揃えるため、グリーンビルディングの国際的な認証プログラム「LEED」や、オフィス機器の国際的省エネルギー制度「ENERGY STAR」などへの関心も集まっています。

地域レベルの環境対策

地域の気候や、地域固有の自然風景を考慮した建築も重要な取り組みです。たとえば都市部のヒートアイランド現象を緩和するために屋上緑化や壁面緑化が行われていますし、ビオトープを含む緑地空間を確保することで生態系の保全も行われています。

啓発活動も重要な取り組みのひとつです。東京都環境局が運営・管理する「TOKYO環境学習ひろば」では、年代を問わず環境への関心を深めてもらうことを目的に、環境問題に関する各種学習コンテンツやイベント情報の発信を行っています。

ほかにも建物から騒音・光害を発生させないための施工、防災面を考慮した設計、地域の歴史的景観への配慮なども、地域レベルの重要な環境対策です。

室内レベルの環境対策

室内レベルの環境対策として挙げられるのは、省エネと居住者の健康・快適性に配慮した設計です。たとえば自然光や自然換気を最大限に活用する設計や、断熱性能に優れた建材の利用が挙げられるでしょう。

建材から放出される化学物質などによる、シックハウス症候群への対策も室内レベルの環境対策といえます。

環境問題に配慮した技術

近年、環境問題に配慮したさまざまな技術が登場してきました。ここではその代表例として、「エコマテリアル」「屋上緑化・壁面緑化」「ZEB/ZEH」を紹介します。

エコマテリアル

エコマテリアルとは、製造から廃棄までの過程で環境負荷が少ない素材のことです。木材や竹材といった天然素材はもちろん、リサイクルしやすいプラスチック(熱可塑性樹脂など)や生分解性プラスチック、建設廃棄物や下水汚泥から作られた路盤材や透水性ブロックなどもエコマテリアルの一種といえます。

参考:環境展望台「エコマテリアル – 環境技術解説

屋上緑化・壁面緑化

屋上緑化と壁面緑化は、建築物の屋上や壁面に植物を植える手法です。屋上緑化では樹木や芝生を植えるほか、庭園、ハーブ園、野菜畑を作るなどして、屋上を緑化空間として活用します。一方の壁面緑化は、壁面に植物を這わせたり、プランターボックスを設置したりして緑化を行います。壁面をツタなどの植物で覆うグリーンカーテンも壁面緑化の一種です。

屋上緑化や壁面緑化は、雨水流出の抑制、ヒートアイランド現象の緩和、建物の断熱性向上などの効果が期待できるうえ、建物や街並みの景観を改善するといった効果も期待できます。

ZEB/ZEH

ZEB(Zero Energy Building/ゼブ)とは、建物で消費するエネルギー量と、再生可能エネルギーで発電した量がほぼゼロとなるような建物のことです。高断熱化や自然エネルギー活用、省エネ設備の導入などにより、エネルギー消費を最小限に抑えつつ、太陽光発電などでエネルギーをまかないます。

一方、ZEH(net Zero Energy House/ゼッチ)は、ZEBの住宅版です。高気密高断熱住宅に太陽光発電などを組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロとすることを目指します。政府は2030年までを目安に、新築住宅へのZEH導入を義務化する方針を示しています。

ZEBについては、以下の記事もお読みください。

ZEBとはどのようなもの?ビジネス上のメリットや利用できる補助金についても解説

まとめ

地球温暖化などの環境問題に世界的な注目が集まる今、建設業界でもサステナブル建築への理解や取り組みが求められています。引き続き国や自治体の施策や制度に注目し、環境問題に配慮した建築技法を取り入れることで、新たなビジネスチャンスを掴めるに違いありません。

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