はじめて入札に参加する際、担当者が真っ先に頭を悩ませるのが「入札方式の種類の多さ」ではないでしょうか?内閣府が公表している「入札・契約制度の概要」によると、入札方式には主に3つの契約制度があります。それぞれの契約制度はさらに2〜3種類の契約・入札方式に細分化されているため、はじめての人が制度全体を理解するのは困難です。
自社がどの入札方式に参加できるのか、どの入札方式が最適なのかを知るには、まずはそれぞれの入札方式についての大まかな理解が欠かせません。今回の記事では、特に利用の割合の多い4つの代表的な入札方式をピックアップして、それぞれの特徴、メリット・デメリットをわかりやすく紹介していきます。
入札とは、国や地方公共団体といった官公庁が民間企業と結ぶ際の契約方式のひとつです。基本的には一定の条件で受注希望者(民間企業)を募り、発注者(官公庁)の評価がもっとも高い相手と契約を行います。
制度の具体的な内容を定めているのは、国の場合は「会計法」と「予算決算及び会計令(予決令)」、地方公共団体の場合は「地方自治法」「地方自治法施行令」という法令です。
これらの中で規定された契約の種類は「一般競争契約」「指名競争契約」「随意契約」の3種類。そしてそれぞれの契約は、さらに以下の契約・入札方式に細分化されています。
上記のうち、3の1「随意契約」以外はすべて「入札」です。入札では原則として「予定価格」が設定されていて、その範囲内で「最低価格」を提示した企業が契約者となります。ただし入札方式の中には、価格以外の要素も含めた総合評価を行うものもあります。
今回重点的に紹介するのは「一般競争入札」「指名競争入札」「プロポーザル方式入札(企画競争入札)」「公募」の4つです。
一般競争入札というのは、国や地方公共団体が契約の内容や入札の参加資格を「公告」して、不特定多数の入札者のうち「最も有利な条件」を提示した者と契約する入札方式です。
「最も有利な条件」の判断方法には、価格の安さを重視するものと、価格以外の要素も含めて評価するものとがあります。前者は「価格競争方式」、後者は「総合評価落札方式」と呼ばれます。
一般競争入札は、現在の入札案件の中でもっとも多い割合を占めています。下の表は一般競争入札について、国や地方公共団体ごとの導入状況をまとめたものです。
19の国の機関 | すべて導入済み |
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124の特殊法人 | すべて導入済み |
47都道府県 | すべて導入済み |
20の指定都市 | すべて導入済み |
1,721の市区町村 | 1,383団体(80.3%)で導入 |
※平成31年1月22日発表の「入札契約適正化法等に基づく実施状況調査の結果について」より抜粋
原則として一般競争入札に参加できるのは、公告された要件にあてはまるすべての企業です。契約の内容や参加資格が明示されているため透明性や公平性が高く、入札実績の少ない企業でも参加しやすいのが大きなメリットでしょう。
一方でデメリットもあります。不特定多数が参加する一般競争入札では、競争率が高いぶん、落札できる可能性は低くなります。また評価に「価格競争方式」が採用された場合、企業の利益はあまり出ません。一般競争入札は、利益よりも実績作りを重視する企業におすすめの入札方法です。
一般競争入札の特徴、メリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
入札の参加者 | 参加者の信用・技術等をある程度担保するため、公告の中で「入札参加資格(注1)」が示されることが多い。 |
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落札者の決め方 | 最も安い価格で入札した者が落札する「価格競争方式(注2)」と、価格と価格以外の側面を総合的に評価する「総合評価落札方式(注3)」がある。 |
メリット | ・「入札参加資格」を満たしていれば全員参加可能。 ・他の入札に比べ、透明性・競争性・公正性・経済性が最も確保されている。 ・入札に参入したばかりの企業でも参加が可能で、実績を積み上げていける。 |
デメリット | ・価格競争になってしまった場合、利益があまり出ないことがある。 |
注1「入札参加資格」…一定の品質を確保するために設定される入札の条件。経営状況や技術的能力といったものから本店・支店の所在地まで、さまざまな条件がある
注2「価格競争方式」…入札時に最も低い価格を提示した企業を落札者とする方式
注3「総合評価落札方式」…価格と価格以外の要素を合わせて評価する方式。価格以外の要素には、たとえば品質や安全性、環境に与える影響などが考えられる
指名競争入札とは、国や地方公共団体が「適切と認める」企業を指名して入札に参加させ、「最も有利な条件」を提示した者と契約する入札方式です。一般競争入札とは違い、企業が自ら参加を希望することはできません。ただし入札者が最初から絞られるため、落札できる可能性は一般競争入札よりも高くなります。
「適切と認める」要件はいろいろです。一般的には企業の経営規模や信用状況などが挙げられるでしょう。「最も有利な条件」は一般競争入札と同じで、「価格競争方式」と「総合評価落札方式」のどちらかになります。
以前は入札方式の主流だった指名競争入札ですが、官公庁によって恣意的な指名が行われやすいことや談合が起きやすいことが問題となり、最近では実施される割合が減りました。会計法の中でも、官公庁が「売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合」は原則として一般競争入札で行うよう定められています(会計法第29条の3第1項)。
現在、指名競争入札が認められているのは次の場合です。
指名競争入札の特徴、メリット・デメリットをまとめると以下のとおりです。
入札の参加者 | 発注者から「指名通知(注1)」を受ける必要がある。中には公募型のものもあるが、参加を希望しても指名を得られなければ参加できない。 |
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落札者の決め方 | 最も安い価格で入札した者が落札する「価格競争方式(注2)」と、価格と価格以外の側面を総合的に評価する「総合評価落札方式(注3)」がある。 |
メリット | ・参加可能な企業が限られるため、落札できる確率が高い。 |
デメリット | ・発注機関からの指名が無いと参加することができない。 ・過去の実績などを考慮して発注機関が企業を指名するので、実績がなく新しく参入する企業は指名されるのが難しい。 |
注1「指名通知」…資力や信用などに基づき、適切と認めた企業を指名する通知。入札の場所や日時などもあわせて通知する
注2「価格競争方式」…入札時に最も低い価格を提示した企業を落札者とする方式
注3「総合評価落札方式」…価格と価格以外の要素を合わせて評価する方式。価格以外の要素には、たとえば品質や安全性、環境に与える影響などが考えられる
プロポーザル方式入札(企画競争入札)とは、一定のテーマに基づく企画書などを提出した企業のうち、最適な提案をした者と契約する入札形式です。なお企画書などの提出は、公募に基づいて行われる場合と、指名に基づいて行われる場合があります。
公募に基づくプロポーザル方式入札は、不特定多数の企業に門戸が開かれている点で一般競争入札と似ています。しかし評価のポイントとなるのは価格の安さではなく、主に企画や提案内容です。このため(価格競争方式を採用する)一般競争入札とは異なり、落札者にある程度の利益が見込めます。また契約の詳細は交渉で決まるため、落札者にとって有利な条件を引き出しやすいのもメリットです。
現在、プロポーザル方式入札が採用されているのは建設コンサルタント業務やシステムコンサルタント業務、アドバイザリー業務、研修業務、資料作成業務など、高度な技術や専門性が求められる分野が中心です。
プロポーザル方式入札の特徴、メリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
入札の参加者 | 発注機関が複数の者に提案書等の提出を求めるケースや、技術や設備等の要件をホームページ等で公募するケースなど、さまざま。 |
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落札者の決め方 | 提案価格と提案内容を総合的に勘案し優先交渉権者を選定し、契約交渉を行う。優先交渉権者との交渉が不調の場合、次順位者(次点交渉権者等)と交渉する。 |
メリット | ・価格競争とならず、落札者にとって有利な価格で契約できる。・契約内容の詳細は契約交渉で定められるため、募集要項、事業契約書案(条件規定書)の協議・交渉が可能。 |
デメリット | ・高い企画力や高度な技術力が必要 |
入札制度には「公募」と呼ばれるものが2種類あります。ひとつは一般競争契約の「公募型指名競争入札」、もうひとつは随意契約の「公募」です。
まず公募型指名競争入札とは、入札への参加を希望する企業の中から一定要件を満たした者を選び、入札に参加させる入札制度です。
公告に基づき不特定多数の企業が応募できるという点は「一般競争入札」と同じです。しかし「要件を満たした企業すべてが入札に参加できる」一般競争入札に対し、公募型指名競争入札では応募した企業を発注者側が審査し「入札に参加できる企業を指名する」という点が大きく異なります(一般競争入札の詳しい内容については「一般競争入札とは?他の入札との違いや流れ、落札のコツまで解説」を参照してください)。
一方、公募型指名競争入札と指名競争入札の間にもはっきりした違いがあります。まず指名競争入札では、入札に参加できる企業が事前に選定・指名されます。このため応募の手続きが存在せず、企業が自ら入札に参加希望することはできません。これに対し公募型指名競争入札では事前の選定は行われず、あくまで応募してきた企業の中から入札参加企業が選ばれます。
次に随意契約の公募について説明します。この公募は、具体的な要件(技術や設備等)や手続きを掲示やwebサイトなどで公告し、応募企業を募る入札方法です。
公募が行われるのは、特殊な技術や設備を必要とする研究開発などの分野が中心です。こうした分野では、すでに特定の企業と随意契約が結ばれているケースが多々ありますが、他にも同等の技術や設備を持った企業が存在する可能性があるため、それを確認するために「公募」を行うというわけです。
さらに、プロポーザル方式入札(企画競争入札)でも公募が行われることがあります。詳しくは「プロポーザル方式(企画競争)入札とは?コンペとの違いや流れを解説」から確認してください。
ここまで、主な入札方式について説明してきました。広く活用されている「一般競争入札」をはじめ、「指名競争入札」「プロポーザル方式入札(企画競争入札)」「公募」の特徴やメリット・デメリットについて理解していただけたでしょうか?
これから入札に参加してみようという企業担当者は、まずは入札実績が少なくても参加できる一般競争入札がおすすめです。公告や公募をチェックして、参加できそうな案件を探してみてください。利益は少ないものの着実に実績を積むことができます。
一般競争入札や公募によって経験や実績を十分に積めば、指名競争入札のチャンスも開けます。入札者が限定される指名競争入札なら落札の可能性も上がりますし、落札すればある程度の利益を見込むことも可能です。
もし企画力や技術力に自信があるなら、プロポーザル方式入札(企画競争入札)に挑戦してみるのも良いでしょう。プロポーザル方式入札なら価格競争にならないため、十分に利益が出る可能性もあります。
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