専任義務があった「監理技術者」が兼任OKに緩和!変更点や条件を詳しく解説

建築工事の現場に欠かせない「監理技術者」。以前はひとつの現場のみに専任する必要があった監理技術者ですが、2020年秋の建設業法改正により専任義務が緩和されました。

この記事では新たな監理技術者制度と、それに伴い新設された「技士補」制度について説明します。

監理技術者制度とは?

監理技術者制度とは、下請契約の請負代金が総額4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上になる建設工事について、元請の特定建設業者が工事現場に配置する「施工の技術上の管理をつかさどる技術者」のことです。

改正前の建設業法では、請負金額が3,500万円(建築一式工事については7,000万円)以上になる場合、工事現場ごとに監理技術者を「専任」で配置する必要がありました。しかし改正された建設業法では条件付きでこの制限が緩和されています(これについては後ほど説明します)。

※監理技術者についての詳しい情報は、関連記事をぜひご覧ください。

監理技術者の役割

監理技術者は建設工事の現場で施工計画を策定し、施工の技術上の管理(下請けの指導監督)を行います。具体的には、監理技術者の役割は大きく分けて以下の4つです。

  1. 施工計画の策定・実行
  2. 工事の工程監理
  3. 工事の品質管理
  4. 工事の安全監理

特に①の施工計画については「工事の目的・内容・契約条件」「現場の条件」「基本工程」「施工方法」「仮設備の選択や配置」について検討し、その後の工事を計画通りに行えるよう配慮しなくてはなりません。

主任技術者との違い

主任技術者と監理技術者はよく似ています。

主任技術者は基本的にすべての建設工事現場に配置しますが、建設工事が以下の3つの要件すべてに当てはまる場合、 主任技術者の代わりに監理技術者が配置されます。

  1. 発注者から直接建設工事を請け負った工事(元請工事)であること
  2. 元請が特定建設業者であること
  3. 下請契約の請負代金が総額4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上であること

なお監理技術者と主任技術者の役割はほぼ同じですが、「下請の指導監督」は監理技術者ならではの役割です。

必要な資格等

監理技術者には高度な専門知識と技能が求められます。このため原則として、

  1. 建設業に関連する「1級の国家資格」(一級建築士や1級建築施工管理技士など)の取得か、
  2. 一般建設業の専任技術者のうち4,500万円以上の元請工事で2年以上の指導監督的な実務経験

のいずれかが必要です。①②のどちらかの要件を満たした人は、「監理技術者資格者証」の交付を受けて「監理技術者講習」を修了することで、監理技術者になれます。

監理技術者の専任緩和について

これまで複数の工事現場を兼任できなかった監理技術者ですが、2020年10月1日から施行された改正建設業法では条件付きで兼任が認められるようになりました。ちなみに兼任が認められる監理技術者は「特例監理技術者」と呼ばれます。

制度改正の背景

専任義務が緩和された一番の理由は「人材不足の解消」です。

建設業界は慢性的に人材が不足しています。特に監理技術者に就任できる有資格者(有経験者)の数は限られるため、これらの貴重な人材を有効活用するのが新制度の狙いです。

またITの進歩に伴い、施工データのクラウド化など「複数の現場を施工管理する」技術が広がってきたことも、制度改正を後押ししました。

兼務が認められる要件

監理技術の兼任を認める要件について、改正建設業法第26条第3項の「但書」には次のように書かれています。

ただし、監理技術者にあつては、発注者から直接当該建設工事を請け負つた特定建設業者が、当該監理技術者の行うべき第二十六条の四第一項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を当該工事現場に専任で置くときは、この限りでない。

わかりやすく言い直すと、「監理技術者を補佐する者(=監理技術者補佐)を当該工事現場に専任で置くとき」は、監理技術者の兼任を認めるということです。

つまり「専任の監理技術者」の代わりに「専任の監理技術者補佐」を置くことで監理技術者は「特例監理技術者」となり、専任でなくても構わない(他の工事現場と兼任できる)ことになります。

ただし特例監理技術者が兼任できる工事(工事現場)の数は、無制限ではありません。具体的な数は政令によって指定されますが、現時点では「2か所まで」とされています。

工事現場を兼任する際は「施工における主要な会議への参加、現場の巡回及び主要な工程の立会等の職務を適正に遂行できる」そして「監理技術者補佐との間で常に連絡をとれる体制である」ことが必要です。監理技術者補佐との業務分担についても事前に施工計画書で明示し、発注者から承諾を得なければなりません。

もしこれらの責務が果たせない(兼任が不適切である)と判断された場合、国土交通省もしくは都道府県知事は特例監理技術者の変更を指示することができます。

「監理技術者補佐」と「技士補」

監理技術者の兼任要件である「監理技術者補佐」は2020年の建設業法改正によって誕生した役職です。

2021年4月1日改正の建設業法施行令第28条では、その要件が次のように規定されています。

法第26条第三項ただし書の政令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。1 法第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者のうち、法第26条の4第1項に規定する技術上の管理及び指導監督であつて監理技術者がその職務として行うべきものに係る基礎的な知識及び能力を有すると認められる者として、建設工事の種類に応じ国土交通大臣が定める要件に該当する者2 国土交通大臣が前号に掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

上記の1にある「基礎的な知識及び能力を有すると認められる者として、建設工事の種類に応じ国土交通大臣が定める要件に該当する者」とは、具体的には「1級技士補」と呼ばれる人のことです。

1級技士補が監理技術者補佐として認められると、監理技術者の職務を補佐する者として「施工計画の作成・実行」「工程管理」「品質管理」「安全管理」「下請への指導監督」に関わることができるようになります。

技士補になるには

技士補になる条件は「技術検定」の「第一次検定」に合格することです。

技術検定はこれまで学科試験と実地試験の二つに分かれていましたが、2021年4月1日の改正で学科試験が「第一次検定」、実地試験が「第二次検定」に変わりました。以前の学科試験は合格しても資格が与えられませんでしたが、新しい第一次検定では合格者に「技士補」の資格が与えられます。

なお技術検定には1級と2級があり、それぞれ第一次検定に合格すると「1級技士補」「2級技士補」となります。監理技術者補佐になれるのは、あくまで1級技士補の方です。

まとめ

新しい制度によって監理技術者の兼任が認められるようになりました。ただし兼任するには専任の監理技術者補佐が必要で、兼任できる工事現場も2か所に限定されるなど、いくつかの条件が付けられています。監理技術者の兼任を考えている方は制度の内容を十分に理解し、要件をきちんと満たすようにしましょう。

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