指名停止になるとどうなる?処分の基準や公表の有無についてポイント解説

「指名停止」は建設業の事業者に深刻な影響を与える措置です。しかし指名停止措置の基準をしっかり理解していないと、意図せずにペナルティの原因を作ってしまう可能性もあります。

この記事では指名停止措置の基準(原因)やペナルティの内容、そして指名停止のリスクを避けるコツについて説明します。

指名停止措置とは?

指名停止措置とは、建設業の事業者などを一定期間入札に参加できなくすることです。

この措置は発注者(官公庁や自治体、独立行政法人など)ごとに行われ、指定された事業者は数週間から数ヶ月の間、その発注者の入札に参加できません

一方、指名停止は事業者の「営業の自由」とは無関係です。指名停止措置を受けても民間同士の契約は可能ですし、原則として他の発注者の入札案件に参加することもできます実際にはさまざまな問題がありますが、それについては後ほど説明します)。

指名停止措置の理由と停止期間

指名停止措置の基準や期間は発注者ごとに決めますが、その内容はほぼ同じです。

特に国土交通省をはじめとする各省庁の場合、「中央公共工事契約制度運用連絡協議会」で策定した指名停止措置の標準モデル『工事請負契約に係る指名停止等の措置要領』に基づいてそれぞれの措置要領や運用基準を決めています。

ここでは「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」に掲載されている措置基準と、指名停止期間を簡単に紹介します。

①事故等に基づく措置基準停止期間
発注部局に提出する競争参加資格確認申請書や資格の確認資料などに虚偽の記載をし、請負契約の相手として不適合と認められる場合認定日より1〜6ヶ月
発注部局から請け負った工事で、過失により粗雑な工事を行った場合(軽微なものを除く)認定日より1〜6ヶ月
発注部局の管轄区域内で行う一般工事で過失により粗雑な工事を行い、その瑕疵が重大なものと認められる場合認定日より1〜3ヶ月
発注部局から請け負った工事で契約違反があり、請負契約の相手として不適合と認められる場合認定日より2週間〜4ヶ月
発注部局から請け負った工事の安全管理が不適切で、公衆に死亡者や負傷者を発生させ、または重大な損害を発生させた場合認定日より1〜6ヶ月
発注部局の管轄区域内で行う一般工事の安全管理が不適切で、公衆に死亡者や負傷者、損害を発生させ、その事故が重大と認められる場合認定日より1〜3ヶ月
発注部局から請け負った工事の安全管理が不適切で、工事関係者に死亡者や負傷者を発生させた場合認定日より2週間〜4ヶ月
発注部局の管轄区域内で行う一般工事の安全管理が不適切で、工事関係者に死亡者や負傷者を発生させ、その事故が重大と認められる場合認定日より2週間〜2ヶ月
②贈賄及び不正行為に基づく措置基準停止期間
以下の者が発注部局の担当者への贈賄容疑で逮捕・起訴された場合
イ 建設業などの個人事業者、または法人の代表役員等
ロ 法人の役員や支店長・営業所長(一般役員)
ハ 法人の従業員(使用人)
逮捕・起訴を知った日より
イ 4〜12ヶ月
ロ 3〜9ヶ月
ハ 2〜6ヶ月
以下の者が担当者以外の職員への贈賄容疑で逮捕・起訴された場合
イ 建設業などの個人事業者、または法人の代表役員等
ロ 法人の役員や支店長・営業所長(一般役員) 
ハ 法人の従業員(使用人)
逮捕・起訴を知った日より
イ 4〜12ヶ月
ロ 2〜6ヶ月
ハ 1〜3ヶ月
以下の者が発注部局の管轄区域内で、他の公共機関への贈賄容疑で逮捕・起訴された場合
イ 建設業などの個人事業者、または法人の代表役員等
ロ 法人の役員や支店長・営業所長(一般役員) 
ハ 法人の従業員(使用人)
逮捕・起訴を知った日より
イ 3〜9ヶ月
ロ 2〜6ヶ月
ハ 1〜3ヶ月
以下の者が発注部局の管轄区域外で、他の公共機関への贈賄容疑で逮捕・起訴された場合
イ 建設業などの個人事業者、または法人の代表役員等
ロ 法人の役員や支店長・営業所長(一般役員) 
逮捕・起訴を知った日より
イ 3〜9ヶ月
ロ 1〜3ヶ月
発注部局の管轄区域内で独占禁止法違反があり、請負契約の相手として不適合と認められた場合認定日より2〜9ヶ月
以下の者が締結した請負工事で独占禁止法違反があり、請負契約の相手として不適合と認められた場合
イ 発注部局の所属担当者
ロ 発注部局の所属担当者以外で、同じ機関に所属する所属担当者
認定日より
イ 3〜12ヶ月
ロ 2〜9ヶ月
発注部局の管轄区域外で、他の公共機関と締結した請負工事で代表役員等や一般役員等による独占禁止法違反があり、刑事告発された場合刑事告発を知った日より1〜9ヶ月
以下の者が締結した請負工事で、一般役員や使用人が談合容疑で逮捕・起訴された場合(使用人についてはイに限定)
イ 発注部局の管轄区域内の他の公共機関の職員
ロ 発注部局の管轄区域外の他の公共機関の職員
逮捕・起訴を知った日より
イ 2〜12ヶ月
ロ 1〜12ヶ月
以下の者が締結した請負工事で、一般役員や使用人が談合容疑で逮捕・起訴された場合
イ 発注部局の所属担当者
ロ 発注部局の所属担当者以外で、同じ機関に所属する所属担当者
逮捕・起訴を知った日より
イ 3〜12ヶ月
ロ 2〜12ヶ月
他の公共機関の職員が締結した請負工事で、代表役員等が談合容疑で逮捕・起訴された場合逮捕・起訴を知った日より3〜12ヶ月
発注部局の所属担当者が締結した請負工事で、代表役員等が談合容疑で逮捕・起訴された場合逮捕・起訴を知った日より4〜12ヶ月
発注部局の管轄区域内で建設業法に違反し、請負契約の相手として不適合と認められる場合認定日より1〜9カ月
以下の者が締結した請負工事で建設業法に違反し、請負契約の相手として不適合と認められる場合
イ 当該部局の所属担当者
ロ 当該部局の所属担当者以外の当該機関の所属担当者
認定日より
イ 2〜9ヶ月
ロ 1〜9ヶ月
業務上の不正または不誠実な行為により、工請負契約の相手として不適合と認められる場合認定日より1〜9ヶ月
代表役員等が禁錮以上の刑に当たる犯罪容疑で起訴、または禁錮以上の刑や罰金刑を宣告され、工請負契約の相手として不適合と認められる場合認定日より 1〜9ヶ月

営業停止処分との違い

営業停止処分とは、指名停止措置よりも重い行政処分です。事業者が営業停止処分を受けると、指定された期間にわたり一切の営業活動ができなくなります。

指名停止措置にともなうペナルティ

指名停止措置のペナルティは、すでに説明した通り「一定期間入札に参加できない」というものです。この入札禁止は「指名停止措置を行った発注者」との契約のみに影響しますが、実際にはある発注者が指名停止措置を行うと、多くのケースで他の発注者も同様の指名停止措置を行います。

その理由として挙げられるのが「指名停止措置情報」の存在です。

指名停止措置情報が公開される

「指名停止措置情報」では、指名停止措置を受けた事業者の名前や、措置の理由・期間が公開されます。この情報は発注者のホームページなどで公開されるため、他の発注者はこの情報を参考に、自分たちの管轄区域でも同様の指名停止措置を行うというわけです。

以下に「指名停止措置情報」の一例(リンク)を掲載しますので、ぜひ参考にしてください。

民間同士の取引に影響することも

指名停止措置は、直接的には公共工事の入札に関するペナルティです。しかし官公庁などから指名停止措置を受けている事業者は、他の民間事業者からも「モラルに欠ける事業者」や「避けた方が良い相手」と見られるおそれがあります。

指名停止措置を受ける(「指名停止措置情報」が公表される)ことは、民間同士の取引にも深刻な影響を及ぼす可能性があるといえるでしょう。

指名停止措置を避けるには?

指名停止措置を避けるには、普段からいくつかの点に注意しておくことが大切です。ここでは3つのポイントに絞って説明します。

法令遵守を心がける

まず基本的なこととして、建設業法をはじめとする関係法令の遵守を心がけましょう。他社の入札妨害をしたり談合に加わることなどはもってのほかです。

自社の能力を理解しておく

自社の技術力やマンパワーを正確に把握することも大切です。特に自社を「過大評価」していると、実際には十分な対応ができない案件を落札して、結果として発注者に損害を与えてしまう可能性があります。

自社の受注状況を把握しておく

いくら技術力があっても、他の工事との関係で「納期が遅れる」ことがあってはいけません。仕様書通りのスケジュールで納品するには、普段から自社の受注状況を客観的に把握しておくことが重要です。公共工事が集中する年度末は、特に注意しておくようにしましょう。

ちなみに、いったん入札した案件を辞退するには「入札辞退届」を提出する必要があります。入札辞退届の内容や提出方法については『入札辞退届とは何か?ペナルティを受けないために大事なポイントも解説』もご覧ください。

まとめ

指名停止措置のペナルティや、それによる深刻なダメージを避けるには普段から「指名停止措置を受けない」ための行動が欠かせません。すでに公共工事を受注している方、これから入札に参加する方は、建設業法などの法令をしっかり守るとともに、自社のスキルやキャパシティを正確に把握しておくよう心がけておきましょう。

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