公募による入札とは?他の入札との違いとメリット・デメリットについて解説

入札方式といえば一般競争入札や指名競争入札が有名ですが、そのほかにもさまざまなスタイルの入札や契約方式があります。

今回は特に「公募」と呼ばれる入札(契約)方式の特徴やメリット・デメリット、手続きの流れなどについてわかりやすく解説していきます。

公募とは

官公庁との契約は、一般に「競争入札」や「随時契約」で行われます。これらの入札や契約は大きく3つに分類され、さらに7つの方式に分けることができます。

区分契約方式
一般競争契約①一般競争入札
②オープンカウンター(見積り)
指名競争契約③指名競争入札
④公募型指名競争入札
随意契約⑤随意契約
⑥プロポーザル方式入札(企画競争入札)
⑦公募

このうち公募という名が付くのは、④の「公募型指名競争入札」と⑦の「公募」です。また⑥のプロポーザル方式入札にも「公募型」と「指名型」があります。

これら3つの「公募」は、いずれも契約の内容や資格条件などを公告して、入札やコンペ、契約の参加者を広く募集するのが特徴です。

関連記事:『代表的な入札方式をわかりやすく解説!特徴からメリット・デメリットまで

公募型指名競争入札について

ここでは主に公募による入札の代表である「公募型指名競争入札」について説明していきます。

そもそも指名競争入札とは、官公庁があらかじめ審査した事業者を指名して入札に参加させる制度です。通常の指名競争入札では一部の限られた事業者だけに声がかかることから、競争性の低下や不公平感につながるといったデメリットが指摘されてきました。

関連記事:『指名競争入札とは?他の入札との違いや入札の流れ、具体的な入札案件の事例を紹介

こうしたデメリットを緩和することを目的に、指名競争入札に公募の要素を取り入れた入札方式が公募型指名競争入札です。

公募型指名競争入札では、まず一定の要件を満たした事業者が応募を行い、官公庁は応募してきた事業者の中から入札参加者を指定します。

公募型指名競争入札の流れ

公募型指名競争入札の流れは次の通りです。

(1)公募内容の公示

発注者となる官公庁が契約の内容と指名の要件(参加資格)を公示

(2)応募

指名の要件を満たした事業者が参加希望書と技術資料などの必要書類を提出

(3)審査

官公庁が提出された書類を審査し、競争入札の参加者を決定

(4)指名

官公庁が競争入札の参加者を指名

(5)入札

指名を受けた事業者が入札書を提出

(6)落札

入札価格の低さを基準として(価格競争方式)、もしくは価格と価格以外の条件を総合的に判断して(総合評価落札方式)落札者を決定

(7)契約

落札者となった事業者と官公庁の間で契約を結ぶ

上記の流れのうち、通常の指名競争入札と違うのは①〜③の部分です。また⑤以降の流れは一般競争入札と同じです。

関連記事:『一般競争入札とは?他の入札との違いや流れ、落札のコツまで解説

メリット・デメリット

公募型指名競争入札のメリットとして、まず以下のものが挙げられます。

  • 落札できる可能性が高い
  • 価格競争になりにくい
  • 官公庁と長期的な付き合いが見込める

これらはいずれも、指名競争入札と同じメリットです。これに加えて公募型指名競争入札ならではのメリットは次の通りです。

  • 指名過程の透明性と公平性が高い
  • 幅広い事業者に入札参加のチャンスがある

これらのメリットは一般競争入札と共通しています。このため公募型指名競争入札は、指名競争入札と一般競争入札の「いいとこどり」をした入札方式ともいえるでしょう。

一方、公募型指名競争入札のデメリットとしては「応募した事業者がすべて入札に参加できるわけではない」ことが挙げられます。とはいえ参加希望すらできない指名競争入札と比べれば、公募型指名競争入札はメリットの大きい制度に違いありません。

それぞれの詳しい内容や、その他の入札などとの比較については『公募型指名競争入札とは?他の入札方法との違いをわかりやすく解説』もご覧ください。

公募型指名競争入札以外の「公募」

ここからは公募型指名競争入札以外の「公募」、具体的には「公募型プロポーザル方式入札」と「随意契約の公募」について説明します。

公募型プロポーザル方式入札

まず公募型プロポーザル方式入札についてですが、そもそも「プロポーザル方式入札」は別名を「企画競争入札」といい、企画書を提出した事業者の中から契約者を決める随意契約の一種です(名前に「入札」という言葉が入っていますが、厳密には入札ではありません)。

契約の対象となるのは「技術的に高度」もしくは「専門的な技術が要求される」業務で、たとえば以下のようなものが挙げられます。

  • 建設コンサルタント業務
  • システムコンサルタント業務
  • アドバイザリー業務
  • 研修業務
  • 資料作成業務、など

プロポーザル方式入札には公募型と指名型があり、このうち公募型では具体的な要件(業務内容や参加資格、企画書の評価基準など)をWEBサイトなどで公告し、参加者を募ります。

公募型プロポーザル方式入札のおおまかな流れは以下の通りです。

  1. 参加資格条件の審査
  2. 手続き開始の公示(説明書の交付開始)〜参加表明書の提出
  3. 技術提案書提出者の選定
  4. 選定通知/提案書要請書の送付〜技術提案書の提出
  5. ヒアリング〜技術提案書の特定・通知
  6. 契約の締結

それぞれの詳しい内容や、指名型プロポーザル方式入札などとの比較については『プロポーザル方式(企画競争)入札とは?コンペとの違いや流れを解説』もご覧ください。

公募型随意契約(公募方式)

随意契約に分類される公募とは「行政目的達成のため、どのような設備又は技術等が必要であるかをホームページ等で具体的に明らかにしたうえで、参加者を募る」制度のことで、「公募方式」とも呼ばれます(財務省WEBサイト『公共調達の適正化について(平成18年8月25日)(平成18年8月25日)』より)。

公募というと広く一般に募集するように聞こえますが、実際にはこの公募(公募方式)の目的は「調査研究等に必要な設備や技術などを持つ事業者」と随意契約を結んでいる官公庁が「他に同様の設備や技術を持つ事業者がいないかどうか確認する」ことです。

もし最初から複数の事業者が要件に該当するとわかっているなら、公募ではなく一般競争入札やプロポーザル方式入札を実施するのが原則とされています。

ちなみに公募の対象は特殊な技術や設備を必要とする「研究開発」などが中心です。

公募の具体事例

最後に、実際に公募が行われた「公募型指名競争入札」と「公募型プロポーザル方式入札」の事例をそれぞれ紹介します。同様の公募は官公庁のWEBサイトや「入札ネット+α」にも多数掲載されていますので、応募を検討する際の参考にしてください。

公募型指名競争入札の例

横浜市「神奈川区缶・びん・ペットボトル収集運搬業務委託」(公告日:2021年12月20日)

件 名神奈川区 缶・びん・ペットボトル収集運搬業務委託
履行場所神奈川区
履行期間令和4年4月1日から令和5年3月31日

入札参加条件

種目令和3・4年度横浜市一般競争入札参加有資格者名簿において、廃棄物処理を第一位に登録していること。
所在地区分市内
その他①横浜市の一般廃棄物収集運搬業の許可を受けた者であること。
②仕様書で定める収集運搬車両を保有又は落札後、委託業務の履行開始前の2月末日までに確保することができること。
③令和3年1月1日から令和3年12月31日までの間において、横浜市の焼却工場への許可業に基づく事業系一般廃棄物の搬入実績が毎月20日以上あること。又は、過去5年以内に横浜市が発注する同種の委託業務での実績を有すること。
④一般廃棄物処理手数料を滞納していないこと。また、公表時に指定する入札参加意向申出の期限から過去1か年の間、一般廃棄物処理手数料の延滞にかかる督促を受けたことがない又は受けても期間内に納付していること。
⑤廃棄物の処理及び清掃に関する法律第7条第5項第4号イからルまでのいずれにも該当しないこと。
⑥公表時に指定する入札参加意向申出の期限から入札日までの間のいずれの日においても、指名停止措置を受けていないこと。
⑦会社更生法に基づく更生手続き、民事再生法に基づく再生手続き、会社法に基づく解散手続きを開始していないこと。
⑧プラスチック製容器包装収集運搬業務委託(令和4年4月1日から令和5年3月31日履行分)及び缶・びん・ペットボトル収集運搬業務委託(令和4年4月1日から令和5年3月31日履行 分)において、異なるブロック(Bブロック・Cブロック・Dブロック)の委託案件を落札していないこと。なお、異なるブロックの委託案件を落札した時点で本件に係る指名通知は無効とする。

提出書類

  1. 公募型指名競争入札参加意向申出書
  2. 車両調達等計画書(自動車検査証の写し又は引受証明書を添付)
  3. 車両保管場所の予定地に関する確認書(車両保管場所の予定地の地図を添付)
  4. 会社の現在事項全部証明書(令和3年12月1日以降に発行のもの)
  5. 誓約書
    1. 適正に委託業務を履行できる範囲で、入札参加することを誓約するもの。
    2. 落札後、委託業務の履行開始前の2月末日までに、仕様書で定める人員、収集運搬車両及び車両保管場所を確保の上、必要書類等を提出することを誓約するもの。 
    3. 委託業務の公共性を充分に認識し、適正に委託業務を履行することができるよう、委託業務の履行開始前に業務従事者に対する必要な研修を実施することを誓約するもの。また、委託業務の履行開始前に横浜市が研修等を行う場合は、研修等に参加することを誓約するもの。
    4. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第7条第5項第4号イからルまでのいずれにも該当しない者であることを誓約するもの。
    5. 誓約書に違反した場合又は委託業務の履行開始時からの適正な履行に支障が生じると横浜市が認めた場合には、契約されなくても異議を申し立てないことを誓約するもの。

神奈川区 缶・びん・ペットボトル収集運搬業務委託 より

公募型プロポーザル方式入札の例

杉並区民営バイク・自転車駐車場設置等事業者公募型プロポーザル(公告日:2021年11月12日)

件名杉並区民営バイク・自転車駐車場設置等事業者公募型プロポーザル
事業用地事業概要(1)民営バイク・自転車駐車場の整備及び管理・運営実施箇所①東高円寺駅周辺②代田橋駅周辺③荻窪駅西口周辺
(2)駐車機器等整備工事及び管理・運営を行う期間①東高円寺駅周辺:令和4年4月1日から令和9年3月31日まで(予定)②代田橋駅及び荻窪駅西口周辺:令和4年3月1日から令和9年3月31日まで(予定)
(3)事業内容
①事業者の提案に基づく駐車機器や案内看板の設置等
②駐車場の管理・運営に関する業務
 ア 駐車場の利用料金徴収(事業者の収入とする)に関する業務
 イ 駐車場業務に関する利用者への対応
 ウ 駐車場の施設及び設備の維持管理・保守点検業務等
 エ その他、利用者への対応、自転車整理、場内清掃など管理・運営に必要な業務
③駐車場周辺及び当該駐車場の属する自転車放置禁止区域内での放置防止活動(放置自転車への警告札貼付や駐車場への利用誘導等)に関する業務
④その他、杉並区との協議により定める業務
参加資格次に掲げる全ての要件を満たす事業者とします。
①地方自治法施行令第167条の4の規定に該当していないこと。
②杉並区競争入札参加有資格者指名停止に関する要綱に定める指名停止要件に該当していないこと。
③杉並区契約における暴力団等排除措置要綱に定める除外措置要件に該当していないこと。
④会社更生法に基づく更正手続開始の申立て又は民事再生法に基づく再生手続開始の申立てがなされていないこと。
⑤法人税、法人事業税、地方法人特別税、消費税及び地方消費税を完納していること。 ただし、新型コロナウイルス感染症等の影響により納税の特例猶予を受けている場合はその旨を証する書類を提出すること。
⑥バイク・自転車駐車場の管理・運営に関する業務を引き続き2年以上営業していること。

評価基準

①経営状況等に対する評価基準

評価項目評価の内容
経営状況経営状況は良好か
業務実績バイク・自転車駐車場の管理運営に関する実績があるか
賠償責任能力賠償責任能力があるか

②企画提案に対する評価基準

評価項目評価の内容
企画提案に関する評価基準
(貸付条件、整備条件、管理・運営条件を満たした適切な提案がなされているか)
・施設について(収容台数、定期利用枠、料金設定、無料利用時間、利用及び誘導案内、防犯カメラ等)
・管理運営について(管理人の配置及び管理運営体制、放置防止活動、利用誘導、緊急時対応、従事者への教育訓練等)
・事業者について(個人情報保護への取り組み等)
・施設運営における優れた独自性、独創性(駐車機器やその他サービス等において)
資料調整力・コミュニケー ション力・提出資料がポイントを押さえ分かりやすいか
・質問に対し適格に受け答えしているか、適切な回答を示せているか。
・事業に対する熱意や意欲があるか。

杉並区民営バイク・自転車駐車場設置等事業者 公募型プロポーザル実施要領 より

公募型随時契約(公募方式)の例

R3東京外環一般旅客自動車供給(公告日:2021年2月5日)

件名R3東京外環一般旅客自動車供給
業務内容本業務は、当事務所が指示する日時及び区間における乗用自動車による旅客運送を行うものである。
履行期間令和3年4月1日~令和4年3月31日 契約締結日は令和3年4月1日とする。
ただし、令和3年4月1日までに令和3年度予算(暫定予算を含む。)が成立しなかった場合は、契約締結日は令和3年4月2日以降、予算が成立した日とする。
暫定予算になった場合、予算措置が全額計上されているときは全額の契約とするが、予算措置が全額計上されていないときは全体の契約期間に対する暫定予算の期間分のみの契約とする。
業務目的本業務は、深夜あるいは早朝時間帯や官用車が不足する場合等における交通手段を確保することにより、当事務所の業務の円滑な推進を図ることを目的とする。

応募要件

基本的要件①予算決算及び会計令第70条及び第71条の規定に該当しない者であること。
②会社更生法に基づき更生手続開始の申立てがなされている者又は民事再生法に基づき再生手続開始の申立てがなされている者でないこと。
③関東地方整備局長から指名停止を受けている期間中でないこと。
④警察当局から、暴力団員が実質的に経営を支配する者又はこれに準ずるものとして、国土交通省公共事業等からの排除要請があり、当該状態が継続している者でないこと。
⑤説明書の交付を直接受けた者であること。
必要な資格に関する要件国土交通省関東運輸局から道路運送法に定める一般乗用旅客自動車運送事業に係る許可を受けている者であること。
業務執行体制に関する要件イ)車両保有台数1000台以上
ロ)配車待時間15分以内に関東地方整備局東京外かく環状国道事務所(東京都世田谷区)に配車でき24時間迅速な対応が可能であること。
ハ)無線サービスがあること。
二)事業者から交付されるタクシーチケットにより乗車できること。なお、 降車時には、領収書、未収書、計算書等のタクシー使用実績を明らか にする書面をタクシー使用者に発行すること。
ホ)事務取扱手数料が発注者にかからないこと。

参加者の有無を確認する公募手続に係る参加意思確認書の提出を求める公示より

まとめ

今回は「公募」と呼ばれる入札方式・契約方式について説明しました。特に「公募型指名競争入札」と「公募型プロポーザル方式入札」は多くの官公庁が利用しているため、これから入札にチャレンジしてみたいという方にもおすすめです。この記事や過去の公募事例を参考にしながら、入札の計画を立ててみてください。

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